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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第二編〜第一章〜悠樹√〜
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想いの所在 #1

「さてと……………………」

帰ろう。真弓は腰を上げる。木製の椅子。普通に使われている椅子だ。パイプ椅子とかではない。他の部はパイプ椅子が多いと聞くから、ここが特別ということ。使われてないのが沢山あるから使おうということなのだろう。

でも、ここからそれらがしまわれている場所は遠い。それなのに、使っている。自分達のためだろう。ここは活動拠点だ。基盤となる場所だ。青春部の始まりの場所だ。パイプ椅子から普通の椅子。そこのグレードアップは必要だということだろう。

「ふわぁ……………………」

真弓はもう一度伸びをする。 欠伸も一緒に出てくる。眠い。少し眠たい。何かをしていたというわかではないから。ずっと、ここにいただけだから。護のことを考えていただけだから。

落ち着くのだ。隣にいるだけでもそうだが、護のことを考えるだけで、想っているだけで、気分が満たされる。

「にゃはははは……」

真弓は、自分の気持ちに苦笑する。勝手に、乾いた音が漏れてくる。

……にゃぁ……。

力が抜けてくる。ドッと、また、椅子に座り直す。立っているのが面倒になった。猫耳の髪飾りもシュンとしている。

「どうなんだろうねぇ……………………。私の気持ちは……」

青春部に入った。それは問題ない。前から気になっていたから。でも、今は、少し違う。入りたいと思う理由が変わった。

自らそこに飛び込むことを、真弓は選択したのだ。それが、手っ取り早いと思ったから。

のんびりはしていられない。それは事実。明らかに遅れを取っているから、皆と同じでもいけない。だけど、同じじゃないといけないこともある。

「うにゃぁぁぁぁぁぁ」

小さく、小さく唸る。

自分の想いに忠実に。それは、大前提。あたりまえのこと。

しかし、そうすると、弊害が生まれる。悩ましい。ずっと悩むことになってしまう。

……苦しいなぁ……。

時々、こんなことを思ってしまう。最近になってからだ。

……自覚したから……?

自分の想いはこうだ、とはっきりと決めた。決めたから、苦しくなっているのだろうか。

それ以前はそんなこと全くなかったから、やっぱり、自覚したからだ。

自分の中で結論を出す。自分を納得させるために。納得したいから。

納得しないと、どうにかなってしまいそうだ。気持ちの所在が分からなくなってしまう。どうしたらいいのか分からなくなってしまう。




「店長。注文です」

伝票を手にしている心愛は、厨房の一番手前で料理をしている店長に声を出す。大きく通る声。

「はぁい。心愛ちゃん」

店長はそんな心愛の声とは反するのんびりとした声だ。でも、仕事ははやい。店長だから。

……忙しいなぁ、もぅ……。

駅前にあるファミレスだ。それも、御崎駅前だ。忙しいのはいつものこと。だけど、今日は大変。店長がこうしてやっていることが、それを表している。

いつもの忙しさなら、何とかなるのだ。でも、今日は店長がいないとオーダーが溜まって大変なことになる。

「で、注文は何かなぁ? 」

「えと、カフェ・オ・レとオムライスです」

「了解。心愛ちゃんも厨房に回ってくれるぅ? 」

「え? あたしがですか? 」

「そう。このままだと遅れちゃうと思うんだぁ」

席は満席。どこも空いてない。もう四時になるというのに、客は減らない。ずっと満席を維持している。

「分かりました」

フロアに五人。厨房に五人。合計十人で回している。休憩すら入れない。五時になれば人も減るだろうしバイトの子は増えるしで楽になるだろうが、それまでが勝負だ。

「じゃ、心愛ちゃん。さっきのオーダーのオムライスを作ってくれる? 」

「了解です」

たくさん掛けられているエプロンを一つ取って、心愛はそれを付ける。ウェイトレスの制服よりエプロンの丈が長いため、エプロンの生地が、心愛の膝をこする。

……急がないと……。

十分。十分くらいでオムライスは作れるだろうか。

冷蔵庫から、必要な材料を取り出す。

ここの店の厨房は、十人が一緒に調理を出来るようになっていて、かなり広くなっている。注文に忙しいとしても、他の人の邪魔になることはまずない。

「あ……。うーん」

十分。この忙しさだ。時間を削ることが出来るのなら、そうした方がいい。

「しょっと………………」

……仕方ない……。

冷蔵庫には、もうケチャップライスがストックされている。これを温めて上に乗せる卵を作れば完成となるわけだ。これだと、時間を大幅に短縮できる。

でも、あんまりしない。店長がこれを嫌うからだ。だけど、本当に忙しい時は許してくれる。

適量、一人分の量を取り出して、それをお皿に盛り付ける。そしてレンジへ。オートで温める。こうすると、最適な温かさまで温めてくれる。

「久しぶりだなぁ……」

心愛は基本、ウェイトレス。調理をすることはあまりない。それに、家でもあまりしない。ここで料理をすることの方が多いくらいだ。

女の子だから、料理は必要。男の子の胃袋を掴む。うん。当然のこと。

料理を始めてからまだ三ヶ月。これからだ。

もうすぐ、もうすぐで、護に料理を教えてもらえる。咲夜さんに料理を教えてもらえる。そこまでに、今より実力を上げておかないと。

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