contagieux
「青春部………………………………」
青春部。護が入っている部。護が入ったことによって活気が増した部。部室が基盤になっているわけではないような気がするが、でも、やっぱり、始まりはここからなのだろう。
……じゃぁ……。
やっぱり基盤だ。ここが元となっている。
「んんっ…………」
真弓は伸びをする。杏がいつも座っているであろう席に座って。
今、この部室にいるのは真弓だけだ。他には誰もいない。
「皆はここで…………」
護とどれくらいの時間を過ごしたのだろう。
どこかに出かけることも多いだろうけど、やっぱりここで過ごすことも多いに違いない。
だって、ここは青春部の部室なのだ。
九人。護を含めて九人。青春部は九人。九人分の机と椅子がある。
九人だけど、今は十二人。自分を含め、ララとランが増えたから。それで、十二人。
次にここに集まる時にでも、自分で机と椅子を持ってこないといけない。それらだけがしまってある部屋がある。この部室とは距離があるけれと、持ってこないと。
……そうなると……。
この部屋も、狭くなる。それなりに広い部室だから今は感じないけれど、三人もプラスされると、感じることになるだろう。
今までの雰囲気も変わることとなる。それは、絶対に避けられないことだ。
変わってしまう。変わることとと変わらないこと。自分の気持ちは変わらないが、それ以外のことは常に変化している。移ろい続ける。止まったりはしない。
……護の気持ちは……。
今、どこにあるのだろうか。どれだけ変わっているのだろうか。
部外者として護を見てきた。護の周りにいる皆のことを見てきた。今からは、そこに自分も混ざることになる。
……迷惑はかけたくないなぁ……。
それだけは絶対。難しいことだけど、本当に無理ことだけど、護の重荷になることだけは嫌だ。
そうなってしまったら、この部に、青春部に入った意味がなくなってしまう。
護をもっと近くで見ておきたい。その気持ちが強くなったから、青春部に入ろうと思った。
その気持ちに嘘はない。もちろんそれだけではないけれど、その気持ちが根本にある。
そこだけは、絶対に守らないといけない。
「ふぅ…………」
帰ろう。誰もいない青春部。自分だけがいる部室。そこにいても、あまり意味はない。ただ、なんとなくこの場所に来たかったから来ただけ。もう満足した。
四時を回った。一時間以上この部室にいた。何人か用事があるって言ってたし、これ以上待ったとて、誰かくるとも限らない。
終業式。残っているのは部室をやっている人くらいだろう。真弓みたいに残っている人は、あまりいないだろう。




