ふたりきり #2
勉強を教えるのは嫌いじゃないし、それに、しぃと氷雨は中学生。中学三年生。去年に通った道だ。分からない、ということはない。本当に大丈夫だと思う……。あ、なんか、心配になってきた。
「別に、二人は勉強が出来ないというわけではないから、苦労はしないと思う」
「分かりました」
悠樹は結構勉強が出来る。そこのところは、妹のしぃと氷雨も変わりはしないのだろう。
勉強の仕方とか、小さい頃から教えられたりしてきたのだろうか。ここのマンションの家賃も高いだろうし、御崎高校だってかなり人が集まるけど私立だ。俺の親だって、両方とも働いてくれている。
……そういえば……。
悠樹からは、あんまり親の話を聞かない。聞いたことがない。
「あの…………、悠樹」
「何? 」
「あ……。やっぱり…………いいです」
「そう? 重要なこととかではない? 」
「はい。大丈夫です」
「ん」
まぁ、後輩というか、悠樹の中で俺の立場は不思議なものだし、俺だって、母さんがどうとか父さんがどうとか、あまり言ったことない。悠樹は俺の家に何回か来てるから、母さんのことは知っている。
別に、親のことを何も知らなかったとしても、何も不都合はない。悠樹があまり話さないということは、話したくない、そういうことなのだろう。
……どうなんだろうか……。
悠樹は誕生日が嫌いだと言っていた。しぃも氷雨も嫌いだと。だけど、悠樹は、青春部の皆と、そして俺と、こうして誕生日会を開いている。好きになろうと努力すると、悠樹は言っていた。
本当のことは分からないしこれは憶測に過ぎないが、悠樹の誕生日嫌いと親というのは、何か関係があるのかもしれない。
少しだけ、悠樹の方に目を向ける。
……聞けるわけがないわな……。
そんなにズカズカと踏み込んでいい話題ではない。俺の考えていることが違うのであればいいが、もし、本当に関係があった場合、俺にはどうすることも出来ないし、聞いたのがマズイことになってしまう。
「それで、いつがいい? しぃとひぃの宿題を見る日」
「八月になってからですかね? 青春部のことを考えると、これから先は忙しい気がしますし」
青春部に加え、俺には、もう一つ別の用がある。七夕パーティーの時に決めた、料理会。心愛と雪ちゃん。咲夜さんに教わる。どうやら俺も教えることになりそうだけど、まぁ、それは良い。
「了解。二人が帰ってきたら伝えないと」
「そうですね」




