計算高く
「はぁ……………………」
ちょっと遠い位置にあったけれど手を伸ばしてラタトゥイユを取り皿に入れる。後少ししか残っていなかった。
そのラタトゥイユのぐざいである赤ピーマンを口に入れる。飲み込んでから、ため息をつく。
決して、美味しくないというわけではない。味は完璧だ。自分では到底、こんな料理を作れない。作れるようになりたいとは思うけれど、思っただけではどうにもならない。行動に移さないといけない。
今日のことだって、護とのことだって、そうなのだ。
頭で考えているだけではどうにもならない。好きだと想い続けるなら、行動で示さないといけない。
……だけど……。
どうだろうか。最近、出来ているだろうか。
その答えは否、できていない、だ。
最近、あまり自分から行動をしてないような気がする。実際問題、そうだろう。
ここに来る前、薫は御崎中学のハンドボール部の練習を手伝ってもらうと、護を誘った。
電話をかけたのは自分だ。だけど、その案を出したのは胡桃だ。胡桃が護を誘って欲しいと言うから、薫は護に連絡をしたのだ。
薫自身、護と一緒に久しぶりにハンドボールをしたいという気持ちはあった。だけど、自分から誰の力を借りずに護を誘うことは出来なかった。
薫の頼みだから、護は絶対に断らない。そのことを、薫はちゃんと理解していた。理解していたから、無理に誘うとはしなかったのだ。
護に先約があった場合、それを邪魔することになってしまうと思ったから。
実際に、葵の邪魔をしてしまった。二人で勉強をしていたという。
まぁ、葵はついてきて一緒にハンドボールをしたけれど、それは葵の本意ではなかったかもしれない。楽しそうにしていたけれど、それは、護との接点を増やすための演技かもしれない。
……さすがにそれはないよね……。
自分の思いをすぐに払拭する。たとえ、葵といえども、そんなことを考えないはずだ。
麻依を挟んで向こうにいる葵。その視線の先に護がいるような気がするが、さすがに、そこまで計算高くないはずだ。そう、思いたい。




