視線
……飽きない、この場所は……。
佳奈の家に来てから、七夕パーティーが始まってから、麻依はずっと傍観者であった。事の成り行きを見ていた。だからこその、感想だ。
護という男の子の事を、麻依は悠樹からしか聞いたことがなかった。悠樹から見える護のことしか、麻依は知らなかった。
麻依と悠樹は親友だ。趣味が同じだったりするから話も合う。喧嘩だってしたことない。ただ、悠樹は少し頑固なところがあったりするけれど。
悠樹が教えてくれた護を念頭に起きながら、麻依は護を見ていた。
護を漢字一文字で表せば「優」であると、悠樹は何度も何度も教えてくれた。そしてその度に、麻依は護ってどんな感じの男の子なのだろう、と思っていた。
期待は裏切られなかった。悠樹が言っていたままだ。優しい。優しすぎる。だから、皆が好意を寄せる。近くにいたいと思う。
修羅場になる。
麻依はそう思っていた。今日の話を聞いてずっと。
麻依は悠樹から聞いていた。護を好きなのは自分だけではないと。青春部皆が護のことが好きなのだと。
だから、この七夕パーティーが楽しみであったのだ。どんな風になるのか。
……静か……。
これがいつも通りなのかもしれないが、麻依はそう感じた。
思っていたよりも静かだと。
今日は七夕だ。イベント的にはクリスマスの方が遥か上になってしまうが、七夕だって捨てられないイベントだろう。皆がこうやって集まっているのにも、そういう理由があるからなのだろう。
それなのに、誰も積極的ではない。
他の人の目があるけれど、何も出来ないというわけではないだろう。出来ることは少なからずあるはずだ。
……でも、やっぱり……。
難しいのかなぁ、と麻依は思ってしまう。
麻依は恋愛をしたことがない。その点では、悠樹とは違う。ここにいる皆とは違う。誰かを好きになったら、慎重になってしまうものなのだろうか。分からない。そんな気持ちになったことがないから。
悠樹の話を聞いていて、悠樹の護に対する気持ちの強さには驚かされる。
それなのに、悠樹はあまり動いていないように見える。護の隣にいたのだって、最初の時だけだ。それ以降は、離れてしまっている。
近くにいたい。そうは思っているはずだ。だけど、行動に移してはいない。移せていない。
……悠樹……。
自分より右側にいる悠樹を見る。モグモグと口を動かしてはいるが、チラッと何回か、その視線は護の方をむいている。




