表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜七章〜
202/384

希望 #4

「え………………っ!? 」

え? 俺に振ってくるの? 咲夜さん。ちょっとびっくり。ほら、心愛と雪ちゃんも驚いている。

「そんなに驚くことですか? 」

「びっくりしましたよ……」

咲夜さんは、何で俺達が驚いているのか分からない様。咲夜さんなりに気をきかせてくれたということなのだろうか。

「その方が楽しいと思いまして。そうですよね? 心愛様? 雪菜様? 」

「まぁ………………」

「…………はい。楽しくはなりそうです」

心愛も雪ちゃんも、それでいいみたい。

まぁ、俺としても嫌なわけじゃないし、咲夜さんに料理を教わることが出来たらもっと上達できる。

「いつにされますか? 」

「心愛が決めていいぞ? 」

「あたしでいいの? 」

何を言ってる。

「心愛が咲夜さんに頼んだんだからな、心愛が決めて当然だ」

「そっか……。そうだよね」

「雪菜もそれでいい? 」

「うん。大丈夫だよ」

「それじゃ…………。やっぱり、夏休みに入ってからになりますよね」

「時間を多く取りたいなら、そのほうが良いかもしれませんね」

もうすぐ期末テストが始まる。そしてテスト返しやら何やらでバタバタしてると、あっという間に夏休みを迎えることになる。別に、何か特別に忙しいということにはならないと思うけど、咲夜さんの言う通り、夏休みに入ってからの方がいい。雪ちゃんとの兼ね合いもある。

「あ………………」

「どうかされましたか? 護様」

「あ、いえいえ……。ただ、夏休みになったら青春部でも何かやったりすると思いますから、それと被っちゃったら駄目だなぁって」

「あ、そっか。杏先輩のことだから、絶対何か考えてるよね」

心愛の言う通りだ。杏先輩は、こういう大きなイベントには目がない。目がないというか、何か出来るのだから何かをしようとする。まぁ、今回の七夕パーティーは杏先輩じゃなくて成美が発案者みたいだけど。

「それなら、そちら側の予定が決まり次第、こっちの予定を決めた方が良さそうですね」

「すいませんね。咲夜さん」

「気にしなくていいんですよ? 暇ですから私は」

暇といってもその暇は、俺達が感じる暇とは何か違う部分があるのだろう。

「それじゃ、メールアドレス交換しましょうか。その方が連絡を取りやすいですから」

「わ、分かりました」

心愛が慌てて携帯を取り出してる中、雪ちゃんはそんな心愛とは反対にゆっくりとしていた。

「あれ? 護は? 」

雪ちゃんより先に咲夜さんとメアドを交換している心愛が、聞いてくる。

「俺はもう知ってるから」

「あ、そっかそっか……。そうだよね」



……だよね……。

心愛は、自分が落ち込んでいるということを自覚した。

別に、護が咲夜のメールアドレスを知っていたとしても、何ら不思議はない。そう、不思議ではないのだ。

護は優しい。誰とでも仲良くすることが出来る。相手が年長者であろうと、たとえ佳奈の執事だとしても、それは関係ない。

「ありがとうございます。不知火さん」

心愛はぺこりと頭をさげる。

「こちらこそ」

気持ちを整え直す。ここにいる青春部の皆は、鋭い。何を考えているのか、ばれてしまう時だったある。

だから、いつも通りに振る舞うことにする。誰にもこのちょっと落ち込んだ気持ちを悟られないように。

……本当に護は……。

護がこうだから、心愛は護を好きになった。分かっている。分かっていること。だけど、毎回ではないけれど、ヤキモチを焼いてしまうこともある。

別に、そのことだって、心愛だけではない。大体、皆似ているのだ。皆、護のことが好きなのだ。護に対する想いは同じだ。


……ふぅ……。

ちょっと緊張した。大人の人とメールアドレスを交換するなんて初めてだったし、仲良くなれそうな、そんな気がしたから。

護のお姉ちゃんの沙耶とも仲がいいけれど、あれは別。

雪菜は着ている浴衣の裾をちょっと整える。気持ちを整える。

「すぅ…………はぁ……」

予定を取り付けることが出来た。これで、夏休みも護と会うことが出来る。

こういう機会がないと、雪菜は護と会うことが出来ない。青春部の皆とは、御崎高校にいる皆とは、立っているポジションが違うのだ。

だから、ちゃんとしないといけない。

……頑張ろ……。

自分のために。周りの人のことも考えないと駄目だけれど、呑気にしている場合ではない時だってある。

それは今ではないのだろうか。もっと、頑張らないといけないのではないのだろうか。そのために、沙耶のススメで浴衣を着たりして、気を引き締めているのだ。

「それじゃ、また」

一礼すると、咲夜は別のところに。

「まーくん…………」

「……護」

……あ……。

被った。被ってしまった。

「どっちから……? 」

護も少し困っている。

「雪菜からでいいよ」

「心愛ちゃんが先にどうぞ……」

譲り合い。譲ってしまう。無意識に。そう、無意識に。

「そう? 」

「心愛ちゃんからで」



雪菜が譲ってくれた。雪菜の方がちょっとだけ早かったのに、心愛に譲ってくれた。

「不知火さんがいる時に言ったらよかったかもしれないけどさ、不知火さんだけでなく護にも料理教わりたいなぁって」

「俺がか? 」

「そそ」

護の料理をそんなに食べたことないけれど、咲夜の方が料理が上手に決まっているけれど、やっぱり、護の料理も見てみたい。

「まーくん……。私もそれ思ってた」

護が料理を作るということは、自分の好みの味付けになるということ。護の好き嫌いが分かるということ。護から料理を教われば、護に料理を振る舞うことがある時、より護の口に合う形になる。

「俺でいいのか? 咲夜さんの方が上手いし、時間を有効に使うなら…………」

「護に一回作ってもらいたいんだよ。料理、するんでしょ? 」

「まぁ、そうだが」

「それに、あたしより絶対に上手く作れる。参考にしたいんだよ。護を」

護に作ってもらいたい。願わくは、自分のために。自分のために護が料理を作ってくれることがあるのなら、それはもう、飛び上がるほど嬉しいことだから。

「雪ちゃんもそれでいいのか? 」

「うん。私もそんなに…まーくんの料理食べたことないし……」

「そうだっけか? 」

「そうだよ……。よく会ってたのは小学校の頃だし…………、その時は沙耶さんとお姉ちゃんが作ってくれてたわけだし」

「そっか。そうだったな」

……そっか……。

護と雪菜は昔から付き合いがあるのだ。護の幼馴染といえば薫になるけれど、雪菜も幼馴染ではあるのだ。護と雪菜、2人だけの絆がある。思い出とかもある。

それらは、もちろん、心愛にはないものだ。まだであって三ヶ月ほどしか経っていないし、まだまだ知らないことだってたくさんある。薫や雪菜には言えるけれど自分には言えない、なんてことだってあるだろう。

……まぁ……。

これから、これから。これから頑張ればいい。2人を越えられるような思い出を作ればいい。それだけの話。まぁ、それが難しかったりするのだけれど。

「ねぇ。護」

「なんだ? 」

「楽しみだね」

「そうだな。なんか、楽しくなりそうだ」

「雪菜も、これからよろしくね? 」

「あ…………、え……? 」

「今日、せっかくこうやって会ったわけだし、こらから仲良くしよってこと」

「あ、うん……っ。よろしく。心愛ちゃん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ