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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜七章〜
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チャンス #4

「雨…………」

降ってはいない。降らないでほしい。七夕パーティーが始まってまだ一時間も経っていない。いつもより、護と話せていない。

それは困る。

何のためにここにいるのか。もちろん、悠樹は理解している。理解しているから、雨が嫌になる。自分の気持ちも沈んでしまうから。

「ユウ? どうかしたの? 」

「どうもしてない」

雨が降りそうなのに、遥は何も気にしてないようだ。

それに。

……いっぱい……。

遥の取り皿には、料理がたくさんのっていた。あまり取りすぎたらダメだったはずなのだけど。遥ってそんなに食べてたっけ、と考えてしまう。

護はまだ戻ってこな…………。

「戻ってきた」


俺と渚先輩は、急ぎ気味に皆の元に戻る。

「おかえり。護」

「おぅ」

パッと見た感じ、皆食べる料理の場所を変えていたが、心愛だけが動かないでいた。

「はい、護。それに、渚先輩も」

「あ、さんきゅ」

「ありがとう」

心愛が俺達の取り皿を手渡してくれる。食べないとな。せっかく、咲夜さんが頑張ってくれたのだから。

「ありゃ、咲夜さんは? 」

おっと。咲夜さんの姿が見当たらない。俺が渚先輩についていってる間に、ここから離れたのだろうか。何か、準備とかなのかな。

「咲夜さんは……シャリオ取りにいったよ。まーくん……」

「なんで? 」

七夕パーティーはまだ二時間以上残されている。料理を運び終わったらすぐに直しにいってたような気がするけれど。直前に取りにいくのが面倒だから、先に取ってこようということなのだろうか。

「雨が降りそうだからだよ」

「雨……降るかもだから………………」

え、雨?

俺と渚先輩は、心愛と雪ちゃんがそう言ってくれたから、一緒に空を仰ぐ。

「あぁ……。本当だねぇ」

残念そうな声を出す渚先輩。俺だって雨は降ってほしくない。さっきより、空から星が見えなくなっている。

「でも、あれだねぇ。さっきより晴れてる」

心愛の横にいた成美が、逆に明るく言葉を作る。

「そうなんですか? 」

何分間かここにいなかったから、その間に起きたことは分からない。

「うん。まーくんが戻ってきたらちょっと……晴れた」

「あ、そうなんだ」

一瞬曇ったけど、すぐにその雲はどこかに行ってしまったということか。そんなに早く天気って変わるものだっけか。

まぁ、雨が降らないようでなにより。降ったらこの中庭にはいられないし、場所を移動しないといけない。咲夜さんがわざわざこの中庭にしたのにも理由があるだろうし。

「護のおかげかもしれないねー」

成美、心愛、雪ちゃんにしてみたら、そう映るか。実際、俺と渚先輩が戻ってきたら晴れてきたようだし。


「じゃ、ちょっと別の料理食べてくるわ」

一つの場にとどまっていてはいけない。それに、さっきまで渚先輩に付き合っていたから、ラタトゥイユしか食べていない。

別にまだまだ時間はあるけど、のんびりはしてられない。

咲夜さんの料理はとてもとても美味しいわけで、のんびりとしていたら食べられない料理が出てしまうかもしれない。

頑張ってくれた咲夜さんに対して、それは失礼だろう。皆のことを考えて、大変だったのにも関わらず作ってくれたのだから。

「まーくん……。私も一緒に」

「分かった」

俺が戻ってくるまでの間に、雪ちゃんはラタトゥイユを食べたということなのだろう。食べてなかったら、俺についてこようとするわけがないし。

「あたしも」

「心愛も? てか、ここから動いてなかったのか? 」

「ま、まぁね。ラタトゥイユ美味しかったから。いっぱい食べちゃって」

あはははは、と笑う心愛。心愛が言ってることはすごいわかる。めっちゃ美味しかったしもっと食べたいが、他の人の分も残しておかないといけないし。

えっと……。フランス料理はラタトゥイユだけではない。他のもあると思う。どれがどれなのかは分からないけど。

あ、あれにしよっかな。あれに。

「ポトフだよね。まーくん」

「そうだな」

「ポトフか。最近は食べてなかったかも」

ポトフを食べる用に、底が深いお皿が準備されている。咲夜さんのありがたい配慮かな。今持ってるこの平らなお皿じゃちょっと無理だろうし。

「ポトフって、どこの料理なんだ? 」

ポトフに向って問いかけてみる。なんとなく、本当に、なんとなく。だって、答えが返ってくるわけがないし。

「フランス料理ですよ。護様」

答えが返ってきた。ポトフからではない。咲夜さんから。

「知らなかったです」

ほぇー、と感心している雪ちゃん。俺も知らんかった。

「心愛は知ってた? 」

「いや、あたしも知らなかったよ。二人と一緒」

「そんなに知られてないかもしれませんねぇ。どの料理がどこの国の料理とか、あまり気にしませんからね」

「あぁ、そうですね」

これは和食だとかこれは洋食だとか。そういうのは見れば大体分かるけど、どこの料理なのかなんてメジャーなやつじゃないと分からない。咲夜さんの言う通り、そういうの気にしないし。

だって、別に美味しかったらそれでいいし、どこの国なのかを知ったところで味が変わるわけでもない。

日本人ってそういうことに疎いと思う。疎いというか、気にしないだけなのか。神でも仏でも信じるし、特定の宗教を信じる人もいれば無宗教の人もいる。

「さぁ、食べてください。時間経ったら冷めてしまいますし」

「そうですね」

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