テスト勉強 #3
「薫。大丈夫か?」
「大丈夫そうに見える……?」
薫は、お腹を抑えつつ答えた。
「高坂先輩。やりすぎなんじゃないんですか?」
「そんなことはない」
「でも、薫はあんなに痛がってますよ」
「私の家ではあれが普通」
普通と言うからには妹か弟がいるのだろう。
高坂先輩の攻撃は受けたくない。高坂先輩の前では寝ない方がいいだろう。いや、そもそも、寝ることなんてあるかどうかも分からないけど。
「それでは、勉強を再開するからさっきと同じ場所について〜」
織原先輩は自分の教科書をひらひらとしながら言う。
定位置につき、皆を見渡してみる。成美先輩はすでに眠たそうにしている。成美先輩も高坂先輩の攻撃を受けていたのに、効いていなかったのだろうか。
まぁ、効いていたとしても成美先輩であるなら、直ぐに痛みなんて引いてしまいそうな気がしないでもないが……。
「おい。成美。起きろ。お前はどうしてあの攻撃を喰らっておいて無事なんだ……」
麻枝先輩は不思議そうにシャープペンシルを成美先輩の手の甲につんつんと刺している。
それにすら、成美先輩は反応しない。
もう一度高坂先輩の攻撃を喰らうのは可哀想ではあるが、さすがに目が覚めるだろう。一回で起きなかったからどうかは分からないところだが。
〇
紆余曲折あり、成美先輩は無事に目を覚まし、麻枝先輩の隣でいそいそと勉強をしていた。
五時になると葵の母が「晩ご飯も食べていってね」と言ったため皆のやる気は俄然上がり、六時まで誰も寝ることも無く終了した。
それぞれ勉強道具を鞄へと片付けていると、部屋の扉が開き、葵の母が入ってきた。
「またで悪いんだけど……、晩ご飯出来ているから運ぶの手伝ってもらっていいかしら」
「わかりました!」
今度は俺も手伝おうと思い、いち早く片付けを終わらせ向かった。
しかし、それを静止するように服の袖が引っ張られた。
引っ張ったのは葵だった。
「護君はここで待っていてください」
「いや、俺も手伝うよ。昼の時は手伝えなかったからさ」
しかし葵は譲ろうとはせず。
「良いんです。ここは私たちがやりますんで」
俺の前へと回り込み、体を押して部屋へと戻そうとしている。
「護君は休んでいてください」
「うーん。そこまで言うなら……」
俺は渋々と踵を返し、部屋へと戻った。
〇
晩ご飯を食べ終えたのはもう外が暗くなった八時ごろだった。
「もう時間も遅いですから、今日は泊まっていってもらっても良いですよ」
葵からそう提案がなされた。
俺はさすがにそこまでしてくれなくても、と思ったもののそう思わなかった人がいた。
もちろん、織原先輩である。
織原先輩は葵がそう言うやいなや、葵へと詰め寄り。
「本当にいいの!?」
「え、えぇ……。良いですよ。時間も遅いですし」
葵は、織原先輩の剣幕に少し押されていた。
こうして、テスト勉強会はお泊り会へと変わったのだった。