応援
携帯をジーパンのポケットの中に仕舞い、先頭、真弓の横に戻る。
「誰に連絡してたの? 」
「咲夜さんにです」
「咲夜さん…………? どうして? 」
「佳奈の家に行ったことがある真弓なら分かると思いますけど」
うんうん、と真弓は相槌をうってくれる。
「大きい門があるじゃないですか」
「あー、あったね。何メートルもあるやつが」
「それです。あの門って咲夜さんが持ってたリモコンみたいなのを使わないとあかないと思ってですね」
「先に開けてもらったと」
「はい。そうしたら、待つ時間もないですし」
まぁ、待つ時間が短くなるとしても数分だけだろうけど、皆結構ウズウズしてるみたいだし。
「気が回るねぇ。護は」
「いえいえ」
……護は凄いねぇ……。
真弓は感嘆する。護の優しさに。
何か、下心があったりするわけではない。自然と滲み出る優しさが、護にある。
実際、真弓は護のことをそんなに知らない。だから、本当のことは分からない。
けど、真弓は思っている。
護の優しさは、何かしらの行動理念から来ているものだと。
……なるほどねぇ……。
何となく、皆が護に惹かれる理由が分かったような気がする。護が皆に好かれる理由が分かったような気がする。
「ねぇ、護」
「はい? 」
「護は……………………。やっぱいいや……」
「ん……? そうですか? 」
喉まででかかっていた言葉を、真弓は飲み込む。この場で言うことでは無かったかもしれない。皆がいる中で、聞くことでは無かったかもしれない。聞くなら、二人きりの時だ。
「うん。ごめんごめん」
後で言おう。そうしよう。少し気になることだから。自分にはあまり関係ないことで、ここにいる自分以外の皆には関係があるだろうことだから。
真弓は護のことを好きにならない。男の子としての話。絶対に、好きにならない。
だって、今から好きになったところで、勝ち目はない。そんな無駄なことをするのなら、他の皆の頑張りをニヤニヤしながら見てるほうがいい。そっちの方が、自分に合ってる。
……にゃはは……。
いろんな意味で楽しみだ。これからのことが。誰が一番になるのか。苦渋の選択の中、護が誰を選ぶのか。
……頑張りなさいよ、護……。
中立の立場に立つ自分だからこそ、皆を平等に応援出来る。まず、誰から応援しようかな。




