沙耶の作戦
……雪菜ちゃん……。
分かりやすい。護が好きだということが。嬉しそうな顔をしている。護と会える。それだけのことでも嬉しいのだろう。当たり前だ。そもそも、雪菜は護に会える機会が少ないのだから。
少ないのだから、その少ないチャンスで何が出来るか。何をするのか。それが、雪菜の課題になるのだろう。
七夕パーティー。
昨日、適当に口走ったことだった。だけど、それは本当に行われる。
そこに何人くらいが集まるのか。その内、何人が護に好意を寄せているのか。それは分からない。
だから、何か雪菜にアドバイス出来るかは分からない。でも、少しだけでも、沙耶は雪菜を応援したい。
雪菜だけではない。薫も成美も遥も悠樹も咲も杏も応援したい。
でも、今回は、雪菜を応援する。
自分は無理だから。弟として、一人の男の子として、沙耶は護が好きだ。
しかし、それは叶えられない。だからこそ、沙耶は皆を応援するのだ。自分が叶えたくても叶えられない気持ちを、皆に託すのだ。
「ねぇ、雪菜ちゃん? 」
「……何ですか? 」
雪菜は、まだ嬉しさの余韻に浸っている。その気持ちは分かる。
「その七夕パーティー。何着ていくの? 」
服装なんかに拘らなくてもいいのかもしれない。中身だけで勝負をすれば良いのかもしれない。でも、見た目も重要だ。雪菜の良さを引き出すことが必要性なのだ。
「服ですか……………………? いつも通り…………ワンピースを着ようと思ってますけど……………………、やっぱり……駄目ですか? 」
「いや、駄目ってわけではないんだけどねぇ………………」
「ねぇ、沙耶」
「んー? 」
魅散の問いかけに、沙耶は考えながら返事をする。
「何か考えてるの? 雪菜のために」
「え……? 私のために………………? 」
「まぁ………………ねぇ……」
沙耶はニッコリと微笑む。雪菜に向けて。
「まぁ、雪菜ものんびりしてられないしね。だって、護君に会える数少ないチャンスなんだから」
「お姉ちゃん……。でも、どうしたら良いの? 」
当然の心配だ。何をすれば護との距離を縮められるのか。それに答えはない。だからこそ、皆頑張るのだ。それぞれのアプローチで。
「浴衣とか着てみる? 」
「浴衣……………………ですか……? 」
「浴衣か………………。なるほど。良い考えだね」
沙耶の案に、魅散は頷く。
「夏だし、まぁ単純といえば単純だけど、それが一番なのかもしれないね。浴衣なら着飾らなくても大丈夫だし」
「でも……浴衣ある………………? 小さい頃しか着たことないよ……? それこそ、まーくんがこっちに来てくれた時とか…………………………」
「あると思うよ。それに、私のおさがりだってあるだろうし。探してみよっか? 」