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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜サイドストーリー〜
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重い、思いと想い #1

俺が今日、この御崎中学の女子ハンドボール部に顔を出したのは、薫に誘われたからだ。

咲もいるというから、薫と咲の二人を手伝う。これが、俺のすることだった。

んで、葵がちょっとやってみたいというもんだから、練習をすることになり、俺が教えていた。

そして今は、胡桃ちゃんを介抱して、保健室まで来ている。

なんというか、ここだけの経緯を見ていると、俺の意思は一体どこにあるのか、と思えてくる。

薫が、もしくは咲が、俺にこうして欲しい、あぁして欲しいと言わなければ、俺はおそらく何もしてなかっただろう。言われたから、それをしているにすぎない。

何でそこまでするのか。それは簡単。父さんの言葉。「自分に尽くしてくれる人には、それ以上の優しさを」

その言葉をちゃんとやれているのかは分からない。父さん自身も、自分でそれが出来ていたのかは分からないそうだ。

小さい時から、他の人に迷惑をかけないように、ということを考えていた。

特に、薫にはだ。幼馴染として、お世話になっている。昔からずっと。今でもずっと。

第三者からしてみれば、それはお節介だったりするかもしれない。やり過ぎだったりするかもしれない。でも、俺は、薫に対してそんな感情を抱いたことはなかった。いつも感謝で一杯だ。

そんな薫が、俺のことを好きだと言ってくれた。無論、その薫の気持ちに対して、父さんの言葉で考えるなら、薫に対しての答えはOKに決まっていた。

でも、そうはならなかつた。

これは、何回か言ったような気がすること。そう、順番。

これだけはどうすることも出来ない。過去を悔やんでも仕方ない。


胡桃(くるみ)はずっと、隣に座っている護の顔を、隣にいてくれている護の顔を見ていた。

だけど。

……あれ……?

それなのに、護は一向に気付かない。胡桃の視線に気付かない。

こんなに至近距離で、ほぼ肩と肩が触れ合っているような距離なのに、そんな距離から胡桃は護のことを見ているのに、護は気付かない。

おかしい。距離が離れているなら別だ。しかし、今は近い。護との距離は近い。

……やっぱり遠いのかな……。

遠い。明らかに遠い。物理的な距離ではない。心理的な距離がだ。

でもそれは仕方ない。だって、他の人達に比べて、護といた時間が圧倒的に少ないからだ。それに、いる場所だって違う。立っている場所だって違う。高校生と中学生という違いだってある。

だから仕方ないのだ、と自分で決めつける。

「いや………………………………」

それだけではない。

自分と護との距離の遠さ。そこにはもう一つの理由がある。それに、胡桃は気づいた。気付いてしまった(、、、、、、、)

……いや……だ……。

一瞬にして理解してしまった。気付きたくはなかったことなのに、気づいてしまった。一旦そう認識してしまうと、その認識が変わることはない。

……宮永さん……。

胡桃の頬に、雫がすぅ、と流れた。

胡桃(くるみ)が護に抱いている感情。それは、憧れだ。尊敬だ。それ以外の何物でもない。何物でもないはずだった。

胡桃は護に気付かれないように、手に持っているタオルで顔を拭く。

「ん? 胡桃ちゃん……? どうかした? なんか目が赤くなってるけど…………。どっか痛くなったのか? 」

「い、いえ………………。汗が目に入っただけです……。大丈夫ですよ」

「そっか」

「はい」

痛いといえば痛い。痛くないといえば痛くない。だから、大丈夫。そう。大丈夫。大丈夫なのだ。

最初から分かっていた。でも、無意識の内に分からなくしていた。そういう風に、自分でリミッターをかけていたのだ。

しかし、そんなリミッターも外れてしまった。自分でかけたリミッターを、無意識の内に自分で外した。

胡桃は、薫の想いを知っている。咲の想いを知っている。葵の想いを知っている。杏の想いを知っている。

好き、という感情をだ。

そう言った感情を抱くことさえ、胡桃自身はまだはやいと思っていた。まだ中学生だし、そういう相手が、好きな相手はいなかった。

いや、いないはずだった。自分が理解していないだけだった。

優しさに触れた。数年振りに護の優しさに触れた。その優しさは何も変わっていない。昔から、胡桃をハンドボールに引き込んでくれた、その時の優しさから、何も変わっていない。

それが懐かしかった。昔からその点に関しては何も変わっていない護の優しさに触れられたことが懐かしかった。

護が好き。胡桃は、護が好きだ。優しすぎる護のことが好きだ。かっこいい護が好きだ。自分に優しくしてくれる護が好きだ。

でも、この想いは叶わない。届いたとしても叶わない。圧倒的に時間が足りない。護の側にいられる時間が少ない。

だから、好きにはならないはずだったのだ。好きになってはいけなかったのだ。

近くにはいられるかもしれない。今みたいな状況になったら、護の優しさを独り占め出来る。自分だけに注いでもらえる。

いや、それが駄目なのだ。今は自分だけだとしても、その優しさは皆に与えられる。自分だけに与えられるものではない。だから、嫉妬をするのだろう。羨ましいと思うのだろう。

そういう思いを抱いたから、葵は練習したいと言い出したのだろう。ハンドボールをやりたいといえば、護に教えてもらえる。護の優しさを感じることが出来る。そんな薫と咲を、葵は羨ましいと思っていたのだろう。

「体育館に戻りたくなったら言ってくれよ? 頭フラフラしなくなるまだゆっくり休んでていいし」

あえて護は口には出していない。だけど、分かる。自分が体育館に戻りたい。そう言うまで、側にいてくれるということだ。隣にいてくれるということだ。

「ありがとう………………ございます……」






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