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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜一章〜
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朝ごはん

 テスト勉強、当日。


 まだ五月の下旬だというのに、太陽は律儀にも、俺達をさんさんと照らしてくれている。雨が降って中止とかになったら元も子もないので良かったが、それにしても晴れすぎだ。少しではあったが、外に出るのが億劫になった。


 俺の隣を歩いている薫と心愛は、太陽の元気良さに比例するかのようにこれでもか、と言わんばかりに元気だった。

朝からこの調子なので仕方が無いかもしれない。


 時は二時間前ほどに遡る。



 「護。起きて」


 俺を呼ぶ声が聞こえる。母さんか? まだ寝かしてくれ。


 「護。護ってば!」


 寝かしてくれと言っただろう?  俺はまだ寝ていたいんだ。


 ではおやすみなさい。


 「護! 起きなさいよ」


 まだ諦めていないらしく、俺の体を揺すってくる。だんだんと意識が戻ってくる。その時ふっと、俺の頬を髪が掠めた。


 (ん?)


 母さんではないな。母さんの髪の毛は短い。そして、同等の理由で薫でもない。


 もう一度髪が頬を掠めた時、微かにシャンプーの匂いが鼻腔を擽った。


 (これは心愛の匂い…………)


 心愛……!?


 はっ、と目を開けると俺を起こそうとしていた心愛と目が合う。


 「にゃっ!?」


 心愛は余程びっくりしたのか、後ろに飛ぶかのごとく、俺から目線を外した。


 「なんで心愛がここにいるんだ?」

 「か、薫に頼まれただけ!」


 薫は頬を赤らめつつ答える。


 なぜそこで赤くなるんだ……。


 「薫? 薫も来てるのか?」

 「うん。下で朝ごはん作ってる」


 へぇ。薫が朝ごはんを作ってると……。


 「いや。待て。どうしてまだ六時なのにここにいるんだ。集合時間は八時半だったはずだけど」

 「別にいいじゃない! 護はそんなことを気にしなくても良いから、早く着替えて下に降りてきてよね」


 と言うと心愛は俺の返答も待たずに、下へと降りてしまった。


 あんまりのんびりしているとまた心愛が呼びにくるので、早々と着替え、薫と心愛が待つリビングへと降りた。


 リビングに降りると、机の上には俺にとっては豪勢な朝ごはんが揃っていた。


 味噌汁やスクランブルエッグなどなど。物心ついた時から朝ごはんはパンだった俺にとって、こういう朝ごはんを食べれるとは思ってなかった。一度は頼もうとは思ったものの、朝から忙しく仕事に出掛ける両親を見ると、その忙しさを増やすようなことは憚れた。


 朝から、薫や心愛が料理をする姿を見れることは、なんとも微笑ましいものだった。ここに葵が混ざると、どういった光景になるのだろうか、と思った。


 せっせと箸やコップを並べ終わった心愛が、こちらに気付いた。


 「あっ! 護! もう準備出来てるから、顔を洗ってきて」

 「おぅ。分かった」


 俺は踵を返し、廊下の先にある洗面所へと向かった。



 リビングへと戻るともう準備も終わっていた。


 「準備くらいは俺がやったのに」

 「それくらいはあたし達がやるよ。護のお母さんにもそう言われたからね」


 そういえば、母さんの姿が見当たらない。


 「母さんは? もう仕事行った?」

 「うん。護が寝ている間にね」


 俺は机の上に並べられた朝食を見ながら、


 「薫と心愛がつくったのか?」

 「うん。そうだよ」

 「ま、まぁね」

 「そうか。じゃ、早く食べようか」


 よく見ると俺のお皿の上には、スクランブルエッグが二つ並んでいた。恐らく、二人が一つずつ作ったのだろう。


 俺がその右側のスクランブルエッグに箸を伸ばすと、薫がこっちを見てきた。


 「ん? どうした? そんなに見られると食べ辛いんだけど……」

 「あっ、ごめん……。やっぱり気になってね。前から作っていたけど、ね?」


 俺はスクランブルエッグを口に運んだ。


 「うん。美味しいよ。いつも通りの味。こっちのは心愛のだよね」

 「う、うん。始めて作ったから味は保障出来ないけど」

 「良いよ。作ってくれただけでも嬉しいからね」


 心愛のも口に運ぶ。


 薫のに比べると差が出てしまうが、始めてなら良いだろう。俺も昔、中学の頃、薫に教えてもらったことはあったけど、ここまで良くで来た記憶は無い。


 「うん。始めて作ったとは思えない」

 「そ、そんなことないよ。薫の教え方が上手いだけだよ」


 薫のほうに目を向けると、


 「心愛の吸収が速いんだよ。護はここまで出来なかったから」


 あまり昔のことを掘り起こさないでくれ。恥ずかしくなってくる。

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