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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜サイドストーリー〜
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葵と護と薫と #4

携帯を開けて、すぐに誰から来たのかを確認する。薫からだ。それも、メールではなく電話。

「もしもし、薫? どうかしたのか? 」

「おはよう。護。今から、二時間から三時間くらい、時間取れるかなぁって……思ってさ……」

「今から…………? 」

一瞬、葵の方に目線を配る。風見駅にもう行ってみる話も上がっているが、まぁ、大丈夫かな。それに、長くても三時間だから昼まで。それからでも悪くはない。

「うん。どう? これる? 」

「どこに? ってか、何をするんだ? 」

「御崎中学でハンドボールしてるんだ。咲もいるよ? 」

「ハンドボール、か………………」

しばらくしていなかった。

薫の練習に付き合うくらいのことはしようと思っていたが、青春部に入ってから薫から練習に誘われた覚えはない。ということは、薫も久し振りにハンドボールをしていることになるのか。

てか、一つ疑問がある。

「何で中学なんだ? 別に高校の体育館を使えばいい話なんじゃ? 」

高校の方は部活があったりするから使えなかったりするのだろうか。

「中学の部活を手伝うことになっててね。胡桃にも頼まれたし」

「胡桃………………? 」

あれ? どっかで聞いたことあるな。テスト開けの探索で咲に会った時に、聞いた覚えがある。それよりも前にどこかで会ったかもしれないが、よく分からん。

「覚えてないの? 小学校の時に教えあげてるはずだよ? 少なくとも、胡桃はそれを覚えているし」

「小学校の時か…………」

「あたしらが中学の時にも何回か教えてると思うよ? 胡桃は三つ下だから」

「てことは、その胡桃って子は中一か? 」

「そうなるわね」

うーむ。少し前の記憶を引っ張り出してくる。まぁ、よく薫と一緒にハンドボールしていた。

男子より女子の方を教えることが多かった。その一人一人の名前を覚えているわけじゃないし、胡桃っていう名前の子がいたような気もいなかったような気もする。

会ったら思い出すかもしれないが。

「ま、まぁ、会ったら思い出すわよ」

「そうだな」

あれ? いつの間にか、ハンドボールをやる体で話が進んでいる。まぁ、久し振りにやってみたいし。結構落ちてるとは思うけど。

「来てくれるのね? 」

「まぁ、時間あるしな。でも、ちょっと待って。葵に言うから」

「葵……………………? 葵と一緒にいるの? 」

おっと。薫さんの声の調子が変わってしまった。あぁ、何かやらかしたな。うむ。やってしまった……。


……どうして葵と一緒にいるの……?

どういった理由があって護と葵が一緒にいるのかは分からない。護の部屋で二人きりなのか、葵の部屋で二人きりなのかも分からない。

……葵の家かな……。

昨日、家に帰ってきた時護の部屋に明かりは点いてなかった。その時はたまたま部屋にいないだけだと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。もともと、家の中にいなかったのだ。

「まぁ………………そうだな。葵といる」

「葵の家………………にいるの? 」

「おう…………」

……葵……。

テスト期間だから、青春部は休みだった。いつもみたいに、放課後に部室で他愛も無い話もしていなかった。この期間に入る前、もしくはその途中のどちらかに、葵は護と約束していたのだろう。葵のことだから勉強をするために家に呼んだんだ、と薫は自分の中で決めておく。

明らかに、誰にも邪魔されないように行動していたのだろう。護も周りに気付かれないようにしていたのだろう。

だとしても、薫は気付けなかった。護とは長い付き合いであり、護の変化には気付けるはずなのに。

「ね? 護。葵に変わってもらっていいかな…………? 」

「え、葵にか……? 」

「お願い」

「まぁ、別に良いが…………。ちょって待ってくれよ」

電話の向こうで、護と葵が話している声が聞こえる。本当に、二人は一緒にいたのだ。

「お電話変わりました。どうかしたんですか? 葵」

「本当に一緒にいるのね…………」

「はい」

薫には、一つだけ確認したいことがあった。まだ、時間は九時にもなっていない。こんな時間から集まったとは考えにくい。

「昨日から一緒にいたのよね? 」

「はい。まぁ、お昼から夕方くらいまではララとランもいましたから、ずっと二人きりだった、というわけではないんですけど」

「そう」

「で、護君を連れて行くんですか? 今日の七夕パーティーまでは、二人でいれると思ったんですけど」

「連れて行く。ハンドボールしたいからね。護と。それに、葵ばかり良い思いさせられないし……」

「薫は護君の幼馴染でしょう? 私は護君と思い出を作っておきたいだけです」

……そうだけど……。

昔は昔。今は今。随分と、自分達を取り巻く関係は変わってしまっている。昔に比べて、護と一緒にいられなくなっている。

「ハンドボールするんですよね? 」

「え、あ…………そうだけど」

「なら、私もついていきませす。ハンドボールをしている護君はかっこいいと思いますから」

「当たり前じゃない。かっこいいわよ」

「より行きたくなりましたね。見てるだけでも構いませんよね? 」

「べつに良いけど、一応目的は中学のハンドボール部を手伝うことだから、そんなに護のプレーは見れないかもしれないよ? 」

「大丈夫です。一回見てみたかったです。ハンドボールを」

……仕方ない……。

「分かった。伝えておく」

「ありがとうございます。護君に変わりましょうか? 」

「いや………………。良いわ。じゃ、また」

「はい」

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