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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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七夕前夜 #4

「もう、寝ますか? 」

クーラーの電源を切り、護の布団も準備した。しかし、まだ、時間は十時になったところなのだ。

明日のこともあるから早く寝たほうが良いのは分かってる。

「まだ早い時間だもんな」

「はい」

まだまだ護と話したい気持ちもある。だけど、そうしたら、どんどん時間が経ってしまうことだろう。すぐに、十一時とか十二時になってしまうだろう。

「葵はどうだ? 」

「私は早く寝たほうが良いと思います。明日のこともありますから」

実際に思っていることとは逆のことを言う。

「そっか。なら、そうするか」

「はい」


「電気、消しますね」

「おぅ」

護の了承を得、部屋の電気を消す。部屋が暗くなる。でも、葵には、護がどこにいるかは分かっていた。護の気配は常に感じていた。

ゆっくりと、葵はベットに潜り込む。

基本、葵の家の部屋は和室が多いのだが、ここ、今自分達がいる部屋だけ洋室になっている。だから、言ってしまえば、この部屋に布団はあまり合わない。

護がすぐ近くで寝ている。

テスト勉強で泊まってもらった時は部屋を一つ挟んでいたから、こんなに近くに護を感じることは出来なかった。

だけど、今は違う。すぐ近くに護がいる。自分に勇気さえあれば、護の布団に潜り込むことだって出来る。

ただ、今はしない。今は(、、)

「護君……………………」

「ん? 呼んだか……? 」

「あ、いえ………………。何もないです。すいません…………」

「そっか」

無意識のうちに名前を呼んでしまったらしい。それだけ、葵の中は護で一杯になっているということ。護のことだけを考えていたということ。

本当に護のことが大好きだ。これだけは、何があっても変わらない事実なのだ。護が他の女の子を選んだとしても、この気持ちは変わらない。

だけど、勿論自分のことを一番に選んでもらいたい。そのために頑張っているつもりだ。

……ずっと前から護君といたような気がします……。

そんな気もするが、実際はまだ三ヶ月ほどしか経っていないのだ。

今ではここまでの関係になっているが、最初の頃はただのクラス委員長としての間柄しかなかったのだ。その時には、ここまでの感情を、大好きという感情を、抱くことになろうとは思っていなかった。

クラスが違えば、会わなかった。好きになることも無かったかもしれない。そう思うと、この偶然には感謝である。

護と出会って、葵も色々と変わった。男の子を好きになったのも初めてだったし、ここまでの人との付き合いも無かっただろう。

「護君」

「何だ? 」

今度ははっきりと、護を呼んだ。

「ありがとうございます」

「何がだ………………? 」

「感謝の気持ちを言っただけです。深くは気にしないでください」

「…………? そうか…………? 」

……好きですよ、護君……。



……寝てますね、さすがに……。

ゆっくりと起き上がった葵は、ベットの上から護を見下ろす。寝返りを打ったのか、護は壁のほうに自分の身体を向けていた。そのため、護の寝顔を確認することは出来ない。

時刻はまだ三時。

普段から寝つきの良い葵が、こんな時間に目を覚ましてしまうことは滅多にない。なのに、葵は起きてしまった。

……護君がいるからでしょうか……。

護のことを少し考えただけで、胸がドキドキしてくる。そんな気持ちにさせてくれる護のことを、ずっとずっと想っていたくなる。

「今がチャンスです」

護はぐっすりと寝ている。ちょっとやそっとじゃ起きないだろう。ということは、今、葵は、護の承認を得なくても何でも護に出来ることになる。

起きている時にそれを頼むのは、恥ずかしさが先行してしまって出来なかった。

だけど、この状況下においては、恥ずかしさよりも護の隣にいたい。その気持ちが勝っていた。

音を立てないようにしながら、葵はベットから下りる。そして、護の側による。

……可愛いです。護君……。

男の子の寝顔を、護の寝顔を、見るのは、勿論今日が初めてである。

……これくらいは、良いですよね……。

葵は触れてみる。護の頬に。護のことが大好きかだから、この手は離したくない。ずっと、護に触れていたい。でも、今日の目的はそれをすることではない。

「お邪魔しますね。護君…………」

葵はゆっくりと、自分の身体を横にする。勿論、護の横でだ。

護に貸したのは母の布団。当たり前のことだが、一人用の布団だ。だから、一緒に一つの布団に入ろうとするならば、かなり身体を密着させないといけなくなる。

……護君……。

ぴったりと、護に寄り添う。そうしても、護から起きる気配はしてこない。作戦成功だ。

護は、自分と一緒に寝たいと思ってくれていたのだ。なら、その願いは叶えるべきだろう。たとえ、こんな形であったとしてもだ。

護にくっついているかは、護の体温が、護の匂いが、護の全部が、伝わってくる。

……あっ……。

葵は一つ気がついた。その護の匂いの中に、自分の匂いが微かに混じっていることに。

何故か。理由は一つ。護が、葵と同じシャンプーを使ったからだ。そのおかけで、葵は、より護を近くに感じることが出来た。

「………………護君」

葵は声に出してみる。好きな彼の名前を。

護はぐっすりと寝ている。密着しているから、寝息も聞こえる。

葵は寝れないでいたが、護に変化はない。お風呂場の時と比べると密着度は足りないかもしれないが、それでも、くっついていることに変わりはないのだ。

……私はこんなにドキドキしているのに……。

護の鼓動は変わらない。それは当たり前のこと。寝ているから、葵と密着していることを護は知らないからだ。

朝になれば自然と気付いてもらえるが、葵はそれまでに気付いてほしかった。

こんな行動に出てしまうほど、護のことが大好きだということを。

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