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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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七夕前夜 #3

「護君は、私の部屋で待っていてもらえますか? 」

「皿洗いならするぞ? 」

「いえ、私がします。護君、疲れてると思いますから」

そして、護は明日も振り回されるはずだ。

勿論、自分も何か勝負をしかけるつもりだが、護の隣にいようとするのは葵だけではない。青春部の皆がそうしようと、何かアクションを起こすことだろう。

そうなれば、護の体力は削られることになるだろう。それに、七夕パーティーは夜にやる。

自分の願いを叶えるために。

護は優しいから、皆それぞれのアクションに付き合ってくれることだろう。終わった後の疲労感は相当なものになるだろう。

「そうか? 疲れてるのは葵もだろ? 」

「ですが、私は慣れてますから」

「良いのか? 」

「はい」

護には、出来るだけ休んでいてもらいたい。倒れられたりしたらこまってしまう。

「じゃ、そうさせてもらう」

「はいっ! 」


あ、そうそう。梅干しと大根おろしを混ぜたものを素麺の上に載せた素麺は、とても美味しかった。何というか、本当にスッキリした気分になった。うん。恐るべし相性の良さである。

「ふぅ………………」

葵が先に部屋で待っていて欲しいと言うもんだから、俺は一人で葵の部屋にいる。

それにしても、ここは葵の部屋だ。その葵がいない中俺だけがこの部屋にいるというのは、何か落ち着かない。

主がいない部屋にいる。

朝から夕方までは、ここで一緒に勉強していたわけだ。自分一人になるだけで、こんなに印象が変わるものなのだろうか。

「さて…………」

期末テストも、もう迫ってきている。そして、すぐに夏休みに入るわけである。

杏のことだから、何か率先して行動してくれるのだろう。俺達はそれに着いて行くだけだ。

杏には、着いていきたいと思えるほどの魅力がある。別に振り回されても良いと思えてくる。

……おっと……。

夏休みのことを考えようと思っていたはずなのに、気が付いたら杏のことを考えてしまっていた。

勿論、杏といると楽しいし退屈しない。杏には、それだけ周りの人を元気にするパワーがあった。

「護君……………………? 」

「わ………………っ!! 」

呼ばれたからそのほうに目を向けてみると、葵が至近距離で俺を見つめていた。いつの間に戻ってきていたのだろうか。全然気付くことが出来なかった。

「何か考え事………………ですか? 」

「いや、そういうわけではないよ」

「そうですか? まぁ、良いです。護君」

「ん? 」

「護君は、どこで寝たいですか? 」

そっか。それも決めないといけないのか。

一回自分の家に帰ってもう一回くるのは面倒だし、それにまたお金がかかる。それなら、泊まるほうがお金も浮くし助かるのだ。

勿論、葵の家に泊まるのだから、寝る場所を決めないといけない。

「葵はここで寝るだろ? 俺は一階で寝るよ」

「それなら、私の部屋で待ってもらった意味が無いじゃないですか」

あ、そっか。だとしても、俺がこの葵の部屋で寝るわけにはいかない。ほら、俺は男で葵は女の子なわけだし。

まぁ、気が付いたら悠樹とかが隣で寝ている、なんてこともあったりしたけど、それとは別だ。

「護君には、勿論ここで寝てもらいます。新しく布団持ってきますから」

「あ、分かった…………」

あ、なるほどね。一緒の布団に潜ってねるわけではないのね。なんだろうか、色んな人に毒されて考え方がおかしくなっているのだろうか。いかんいかん。


「しょ…………っと」

母の部屋から母の布団を持ってくる。護にはこの布団を使ってもらおう。

……でも……。

護君は、私と一緒の布団で寝たかったのでしょうか、と葵は考えてしまう。

葵が別の布団を持ってくると言った時、護は意外そうに答えていた。一緒に寝るのだろうと思っていたはずだ。

そういう考え方に辿り着いたということは、自分以外の誰かと一緒に寝たことがあるということだ。

その相手は、青春部の誰かだ。それが誰なのかは分からないが、そこの部分において自分は負けていることになる。

別に、一緒にくっついて寝たくないわけではない。むしろ、そうしたい気持ちはある。だけど、そうしたいという気持ちを、葵の理性が制止しているのだ。

あの時、お風呂で抱き付いてしまった時でもかなりドキドキして、どうにかなってしまいそうだったのだ。

あれは数分の出来事。でも、一緒に寝ることになれば数時間密着することになる。恐らく、それは耐えられない。

「戻りましょうか」

考えても仕方が無い。今更、一緒に布団で、と言うわけなはいかない。

別に言えば、一緒に寝てくれるだろう。今は出来ない。自分の気持ちをコントロール出来るようになった時、そういうことをしてみたいと思う。


「護君、扉開けてもらえますか? 」

「分かった」

布団を持っているのだから、片手でドアを開けることは出来ないだろう。

「ありがとうございます」

葵が部屋の中に入ってから扉をしめる。

「護君。クーラー消していいですか? 」

「ん? 」

「暑いからずっと付けてても良いんですが、身体冷えてしまうので」

「そうだな。暑くなったら扇風機を回せば良いわけだし」

「そうです」

扇風機にしろ、クーラーにしろ、どっちにしても部屋を涼しく出来る。なら、まぁ、どっちでも構わない。実際、クーラーの方が涼しいが、それで身体を壊してしまったら元も子もない。ここは、葵に従うべきだろう。


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