Love Shower #4
勿論、ランの言葉は、的確に的を得ていた。
「まぁ…………ね」
護に想いは伝えた。告白と、それ以上のものを以って、護に想いを伝えた。伝えただけで、護からの返事は聞かなかった。今回の目的は伝えること、ただそれだけだったからだ。
護には少なからずララの想いが伝わったはずだ。だから、もし、護が誰か一人を選ぶ時、自分のことを考えてもらえる。
後は、もっと護の気を惹きつつ、答えを出してくれるのを待つだけだ。
「明日また会えるじゃないですか。なら、その時に、護さんからこっそり聞けば良いんです。何があったかを」
「そうだね」
……そう、明日……。
またしても、明日は勝負の時だ。どれだけ護の隣にいることが出来るか、それが今後に影響を与えるのだ。
……負けないよ……。
「はぁう……………………」
……私は何をしてしまったのでしょう……。
あれは事故だ。自分から行動を起こしたわけではなかった。だけど、自分の気持ちを抑えることが出来なかった。
「護君はまだでしょうか……」
葵がお風呂から上がってから、まだ全然時間が経っていない。だから、護が上がってくるのにはまだ時間があるのは分かってる。
こんなにちょっとの間護と離れているだけで、もっと護の隣にいたいと思ってしまう。あんなに抱きついてしまったからだろう。
……護君……。
「沙耶さん」
「ん………………? どうしたの? 雪菜ちゃん」
魅散がお風呂に入ってる隙を狙って、雪菜は、沙耶にあることを尋ねた。
「まーくんは………………、明日時間あったりするんですか? 」
「あぁ、七夕だから、会いたい? 」
……バレてる……。
「………………はい」
泊まりに来てくれた沙耶と、姉の魅散と今日はずっと一緒にいた。だけど、そのような感じを外に出した覚えはない。感じられないように、敢て、その話題には触れてこなかった。それなのに、沙耶は、雪菜の思いを一発で見抜いてきた。
「でも…………、会えないね」
「え………………? 」
「残念ながら予定が埋まってるみたいだよ」
「やっぱりそうですか…………」
そうだとは思っていた。それでも、確認はしておきたかった。
自分に与えられるチャンスはとても少ない。だから、この七夕という機会を使って、少しでも護との距離を縮めておきたかったのだ。
……仕方ないの……かな……。
……おっと……。
護に予定がある、と言ってしまったからか、雪菜の表情が一気に暗いものになる。
七夕という年に一回の特別な日に会えないのだから、こういう気持ちになるのも分からなくはない。他のメンバーと比較して雪菜は護と会える時間が極端に少ないから余計にそう感じているのかもしれない。
……ふむむむむ……。
テストが近いから勉強をするんだ、と護は言っていたが、高校生の男女が一つ屋根の下。それに加え、明日は七夕だ。何か別の予定を立てていたとしても何ら不思議はない。
……青春部の皆で集まって七夕パーティーとかするのかな……。
もし、そうなら、そこに雪菜が入る余地が無いのかもしれない。時間が経てば経つほど、雪菜の頑張りは無駄なものになってしまうかもしれない。
雪菜の気持ちは無駄にしたく無い。護に頼めば、その七夕パーティーの輪の中に参加出来るだろう。しかし、周りの皆との面識が無い上に、学校も違う。浮いてしまう可能性がある。
……でも……。
それくらいのことなら、雪菜本人も理解しているはずだ。それを理解した上で護に会いたい、護の隣で七夕を過ごしたいと思うのであれば、沙耶は雪菜に手を差し伸ばすだけだ。
「会いたい? 護に……」
「でも…………、まーくん予定があるって…………」
「うん。でも、頼んだら一緒にいてくれるんじゃないかな」
「他の人の…………、まーくんのことが好きな女の子の邪魔になりますから…………」
「雪菜ちゃんは護のことが好きなんでしょ? なら、邪魔してもいいんじゃないかな? 」
「………………え? 」
少し戸惑っている表情を、雪菜は浮かべている。
「他の人から護を奪うくらいの勢いがなかったら、護とくっつくことは出来ないよ? 」
「沙耶さん………………」
「雪菜ちゃんが頑張るって言うのなら、私が護に頼んであげる」
「いえ、自分で頼みます。まーくんのメールアドレス知ってますから」
……お……?
さっきまでの自信の無さはどこえやら、雪菜の表情はとても強気に見えた。
「じゃ、頑張んなさい」
「ありがとうございます。沙耶さん」
「パーティーに参加するだけじゃ意味ないわよ? ちゃんと、頑張るのよ」
「はい。まずまーくんに頼んでから、明日のこと考えます」
「待ってるからね。魅散と二人で」