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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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Love Shower #1

「それじゃ、私達はそろそろ帰りましょうか。ね? ララ」

「だね」

もう五時くらいになったのだろう。外を見てる限りではそんな時間になったとは思えないが、部屋に飾られている時計を見れば、そうなっていることがすぐに分かる。

……そろそろ、だね……。

まず、今回の目標は達成出来た。告白も出来たし、それ以上のことも出来た。なら、今日、やり残したことは何も無い。

……バレてないしね……。

葵とランが帰ってきてから護から離れようと思っていたのだが、護の携帯が鳴ったために、二人が帰ってくるちょっと前に護と離れることになってしまった。

誰からのメールかなんてことの言及はしなかったが、明日にある七夕パーティーに関するメールだってことくらい、すぐに分かった。

「また明日ね。護、葵」

「おぅ。また」

「はい、また明日です」

「ありがとうございました。葵」

「いえ。こっちも楽しかったですし。また、一緒にお菓子作りましょう」

「はい」

少々帰るのは名残惜しいが、また明日会える。なら、その時まで、楽しみはとっておくほうが良い。

……楽しみ……。


ララとランが帰ってから数十分後。俺達も、勉強をやめることにした。今日は結構勉強したし、まだやり足りない部分は、明日にやれば良い。明日も葵と勉強出来るのだから。


……この後はどうしましょうか……。

ララとランが帰ってくれたから、やっと護と二人きりになることが出来た。ずっと二人きりでいるはずだったが、思はぬ事情でそれが出来なかった。

でも、この後は、明日の七夕パーティーの時間になるまで、たっぷりと護といれる時間がある。

さっき自分が勉強をやめようと言ったから、護は、すでに鞄の中に勉強道具を詰めはじめている。

そんなに大きくない鞄であるが、今日の夜と明日に着る服くらいは入っているだろう。

自分から、護に、家に泊まって、と言ってはいないが、二日間一緒に勉強しようと言ってあるから、そのつもりで来てくれているはずだ。

「護君」

「どうした? 」

「晩ご飯……、どうしますか……? 」

作るということになるのなら、時間的にそろそろ作り始めてもいい頃合いだ。

「二人で作る……? それともどこかで食べる? 」

「作るなら、恐らく買い物に行かないとダメかもしれません」

「葵はどっちが良い? 俺は作っても良いと思ってる。その方が楽しそうだし」

「なら、そうしましょう」

護がそう言ってくれるのなら、葵はそれに従うまでてある。絶対に楽しくなるだろうから。



車を出した咲夜は、何と無く、買い物をするためだけに御崎駅に来ていた。近くにも大きめのスーパーはある。だけど、買いたいものが無い、となってしまった時困るから、わざわざ、ここまで遠出をしてきたのだ。

スーパーの屋上にある駐車場に少しばかり目立つ黒い車を止めて、咲夜は、御崎デパートの中に入った。


咲夜が屋上からデパート内に入った時、一階の入り口から、葵と護もこの中に入って行った。


「…………凄いですね」

「あぁ、そうだな……」

デパート内に入るや否や、葵は感嘆の声をあげた。俺は、その葵の言葉に同意する。

葵が少しばかりは驚いてるのも無理もない。

明日が七夕だからであろう。デパート内は、七夕一色であった。一応、今俺達がいるのは食品売り場だが、勿論、上の階もあるわけで、服とかも売ってるだろうし、もしかしたら、着物とかも売ってるかもしれない。

「七夕ですからね。やっぱりこうなってると思ってました」

「へぇ。そうなんだ…………」

「はい。このデパートは、毎年この時はこういう催しをするんです」

「それにしては、かなり驚いていたようだけど……? 」

「あ、お母さんとかから聞いたことがあるだけで、七夕の時期にここに来るの始めてなんです」

「なるほど…………」

喋りながら歩いていたので、レジを通り過ぎた時に、葵は何気なしにカゴを手にとってくれた。このカゴには、今から食材が入れられていくのだろう。そんなに重くならないとは思うが。

「カゴは俺が持つわ」

「ありがとうございます」

葵の微笑みを受けてから、葵からカゴを受け取る。そして、葵の隣に並ぶ。


「どんなの作る? 」

案外隣に並んで歩くのは他の人の邪魔になりやすいようで、葵との距離は、肩と肩がくっつきそうになるほどに、近づいていた。

「七夕ですから、やっぱり思い付くのは、素麺ですね」

「素麺か……」

「でも、夕食を作るわけですから、素麺じゃ、物足りないかもしれません」

「そうかもな」

素麺に合う献立があれば良いのだが、俺はあいにくそんなものは知らない。あんまり気にしたことがないからだ。

「護君は、里芋………………好きですか? 」

「里芋……? 」

「はい。里芋です。昨日、少し調べていたのですが、里芋の煮付けとかも合いそうかも、と思ったんです」

なるほど。食べてみないと合うかどうかなんて分からないが、葵の話を聞く限りは大丈夫だと思う。なんだって、葵の手料理なわけだし。

「里芋は……、嫌いですか………………? 」

俺の顔をのぞきこむようにして、葵が聞いてくる。

「あ、いや……。そうじゃないよ。食べてみたいなぁ、って思ったんだ。葵が作る里芋の煮付けをさ」



……私の作った……。

話の流れ的に、護は「里芋の煮付け」と限定していたが、葵が作った料理を食べたい、と考えることも出来る。

「ありがとうございます。護君。なら、それも献立にいれましょう」

「おぅよ」

どんな晩ご飯にするか、大方決まってきた。

勿論、ここのデパートについては護より葵の方が知っているから、先導するように、護の隣を歩く。

護が楽しみにしてくれているのなら、里芋の煮付けも頑張って美味しく作りたい。

でも、メインは素麺になる。ただの素麺を食べるわけにはいかない。それなりに、工夫を加えないといけない。その方が、護に楽しんでもらえるだろうから。

……どんな感じにしましょう……。

元々、素麺はさっぱりとしているものだ。だから、工夫を凝らすのも、さっぱり系がいいだろう。夏だから、重くなるものは少し避けたい。

「あ、護君。そこの梅干しを取ってもらえませんか? 」

「お、分かった」

葵の隣から離れた護は梅干しをカゴの中に入れると、すぐに隣に戻ってきてくれる。

「梅干し、何に使うんだ…………? 」

「素麺に使います」

「素麺に……? 梅干しをか……? 」

「はい」

「そっか……」

「楽しみにしていてくださいね。美味しくしてみせますから」

「うん。楽しみにしてる」


……おや……?

わざわざ遠出をしてきたデパートで、咲夜は、見知った男の子と、知らない女の子の姿を発見した。勿論、見知った男の子というのは、護のことだ。

……護様と…………誰でしょうか……。

護と仲睦まじく話をしているところから、青春部のメンバーだというのとは分かる。

佳奈から、明日のために青春部全員の名前と、ほかに参加してくれる人の名前は聞いたし、覚えた。だけど、名前しか覚えていないから、一回姿を見て確認するまで、誰が誰なのかを判別することは出来ない。

……後で声をかけましょうか……。

護達も買い物をしている。自分も買い物をしている。だから、必然的に、後でもう一回出会う可能性が高い。なら、今ここで声をかける必要性はない。

……二人の邪魔をするわけにもいきませんし……。

買いたいものが今護達がいるほうにあるのだが、咲夜は、くるっと身を翻した。

あの二人の間に割って入るほど、咲夜は無神経ではない。

……さて、先に買えるものを買っておきましょうか……。


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