咲夜の七夕事情
「さて………………」
咲夜は、一人で馬鹿でかい食堂に足を運んでいた。無論、明日のことを考えるためだ。
あの後一人参加する人数が増えたので十三人になった、と佳奈に教えられた。
それだけの人数を収容することが出来、尚且つまだスペースが残る場所といえば、この場所しかない。
それに加え、明日は雨がふる可能性がある。さっき、ちらっと天気予報を調べてみたら、そう予報には書かれていた。
そのことを考えると、屋外でやるより屋内でやるほうが得策である。外でやることを前提に考えていた時、雨が降ってしまうと、考えていたことの全てが、雨と一緒に流れてしまうからだ。
「買い物してきましょうか…………」
ここにある冷蔵庫やらの中には、それなりの食材が揃っている。だが、せっかくの七夕だ。新しく買う方が良いだろう。それに、雨が降ってしまえば、外に出るのが億劫になってしまう。
「何を作りましょうか……」
何を作るか。そのことについては、全て咲夜に一任されている。どんなものも作っても良いといことになる。全ては、自分の腕にかかっているのだ。
……どうしましょうか……。
十三人が集まるとなると、好みも十三通りある。となれば、皆の好みに合致する食事を作るのは中々困難な話である。それに、来る人全員の好みの味を、咲夜は知らない。一般的に受ける食事を作る必要があるのだ。
「難しいですねぇ………」
ある意味簡単かもしれないが、ある意味難しい。失敗を減らそうとするならシンプルに作るのが一番だ。しかし、今回、自分が任されているのはいつも作っている晩ご飯ではない。七夕パーティー。少しばかりは豪勢にする必要がある。
だから、難しいのだ。だけど、だからこそ、そこにやり甲斐がある。
「悩んでいても仕方ありませんね」
食材を目にすれば、何を作れば良いのか、ひらめくかもしれない。
そう思った咲夜は、ひとまずこの食堂から自分の部屋に戻ることにする。
いかんせん、この執事服では外には出られない。いや、出られないわけではないのだが、スーパーに行くとなると、それなりに長い間一目に晒されことになる。少し、恥ずかしい気持ちが咲夜の中に生まれてしまう。
「どの服を着ましょうか……」
ただ買い物に行くだけなんだからそこまで気にしなくても良いかもしれないが、誰かに鉢合う可能性だってある。そうなった時のために、あまり変な格好はできない。
「これにしましょうか」
薄めのピンク色のブラウスと、白色のミニスカート。あまり着ない組み合わせだ。
……ちょっと私には可愛いすぎるかもしれません……。
そんなことを思いながら、咲夜は、それを身に付けるのだった。