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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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恋の宣戦布告 #2

……まだ、何もしないんですね。ララ……。

ララの向かいの場所に座って、国語の問題集と睨めっこしていたランは、勉強に集中出来ないでいた。

隣にいる護が気になるというのもあるが、それよりも、ララのことが気になるのだ。

宣戦布告、とララは言っていた。

だから、ランは、ララのことだからすぐに行動に移すもんだと思っていた。だけど、ランの思いとは裏腹に、ララは勉強に集中している。

今はまだ、何もしないということなのだろうか。それとも、勉強をしているふりをして、何かを考えているのかもしれない。

双子だといえども、ララが何を考えているのかは分からない。皆によく言われるのだ。正反対だと。

……まぁ、実際その通りですからね……。


……全然時間経ってないよぉ……。

化学式やらを目にいれながら、自分の腕に付けている腕時計をちらちらと、ララは見る。

勉強を一通りした後に、何かアクションを起こそうと思っていた。だけど、結構勉強していたつもりなのだが、時間は全然経っていなかった。実質、経った時間は三十分ほどである。

……集中、集中……。

自分を奮い立たせてみようとするものの、いっこうに、ララの頭は勉強をしようとしてくれない。

……護は……。

ちらっと、護の方を見ている。

周りには一切目もくれず、数学の問題を解き進めている。数学も、ララの苦手な教科である。すなわち、ランの得意分野。

……はぁ……。

勇気出るかな、と思ってしまう。護を奪いたい。その気持ちはある。

そのためには、告白やら何やらをしなくてはいけないということも分かっている。分かっているのは分かっているんだけど、実際、護を目の前にして出来るかは不安。

抱きついてみたり、腕を組んでみたり、そういうことなら、出来る。それくらいのことなら、今まで何回もしてきた。

しかし、告白となると別の話だ。今までの関係が崩れてしまうことになる。

他の皆と比べると、それほど護と仲が良いというわけではない。だから、ここで告白をすれば断られる可能性が高い、ということだ。

なら、さっきも思っていた通り、青春部に入るという選択肢がある。

でも、入ったところで、その先どうすれば良いのか。

護も青春部に入っているのだから、葵達以外の青春部の皆とも仲が良いということになる。なら、そこでも、自分の立場は、護のことを好きだと思い気持ちは、一番下ということになる。

……それでも、奪いたいんだよねぇ……。

何故か。こんな想いにさせてくれたのは、護が初めてだから。


……分っかんないなぁ……。

いや、どうも、俺はあんまり数学が得意ではないらしい。出来ないというわけではないんだけど、どうしても理解するのに時間がかかってしまう。

それに比べると、葵には驚かされる。

国語をしてるかと思えば化学をしていたり、生物をしていたりとか、そこからも、理解の速さがうかがえる。

「なぁ、葵教えてくれ」

対面にいる葵に、声をかける。

「はい、良いですよ。数学ですか? 」

「おぅよ。ここの計算が合わないんだ」

答えを見てみたりしてるのだが、どうしても合わない。

「分かりました」

そう一声あげると、葵は立ち上がり、俺の横に来てくれる。葵が座る場所を作るために、ランのいる側にちょっと近づく。

「隣、座りますね」

「うん」

いつも通りの真剣な目付きで、葵は問題を解こうとしてくれている。全ての問題に、こういった姿勢で取り組んでいるのだろう。だから、成績も上がるのだ。

隣でそんな葵を見ていると、凛々しいとか、そういう印象をやっぱり受ける。だから、惹かれるのかもしれない。

「護君、護君」

「ん…………? 」

「ここが間違ってますね」

俺の方に身体を寄せて、葵は俺の解答を指差して間違えているところを教えてくれる。

「ここですね。ここ、プラスではなくてマイナスです」

「あ、マジか……」

「はい、問題文の読み間違いですね」

「そっかそっか」

そんな簡単なミスをしていたのか。

「護君、結構、こういうケアレスミス多くないですか? 」

「おぅ。そうだな」

「おそらく、数学以外でもじゃないですか? 」

「そうだな。よく分かったな」

他の人にそういうミスを指摘されるということは、常日頃の小テストやら何やらでも、そういったミスをしているということだろう。

「はい、護君をずっと見てますから」

「お、おぅ…………」

急にそんなこと言われてると、ヤバい。心が動かされる。


「はい、護君をずっと見てますから」

そんな告白にも似た葵の言葉を聞いて、ララは思う。

……なるほどねぇ……。

その葵の言葉に護は少し顔を赤らめているが、葵も狙って言ったわけではないだろう。自然と、出てきた言葉なのだろう。それほど、護のことが好きだと見受けられる。

……僕に出来るかなぁ……。

さらっと、それらしいことを言うことが出来るのなら、護を惹きよせることが出来るだろう。

「ララ」

「ん……、あ……? どうしたの? 」

「手が動いてませんよ」

「あ、ごめんごめん」

「おやつ用意しますから、頑張ってください」

「甘いもの…………? 」

「えぇ。もしかして、甘いの苦手ですか? 」

「う、うん。ちょっとね……」




「そうだったんですか…………」

知らなかった。それなりにララのことを、このララとランの二人のことを知っているつもりだった。好みを知らなかったということは、本当に知っているつもりだったということになる。

「何かゴメンね。葵…………」

「いえ、ララは謝らないでください。誰にも苦手なものはありますから」

「ランは甘いもの大好きだから、ランに出してあげて」

「分かりました」

これで、また二人のことを知れた。これから、二人のことをより知っていけば良いのだ。

知れば知るほど、その人に対して何かをすることが出来る。お礼をすることが出来るのだ。

「甘いのが苦手だということは、辛いものとか酸っぱいものとかはどうなんですか? 」

「あ、そういうのは好きだよ」

「じゃ、ララの好みに合いそうなおやつも準備しますね」

「良いの…………? 」

申し訳なさそうに、ララは聞いてくる。

「はい」

他の人に恩を売っているとか、そういうわけではない。そうしたい、と思える。

護を見ていると、自然にそう思えてくるのだ。

護は、自分に利益が無かったとしても、他人に優しくしてくれる。護はそういう男の子なのだ。

「多分何かあったと思いますから、そんなに準備にも時間かかりませんから」

「なら、お願いするね」

「はい」


……頑張ろ……。

後、ちょっと、勉強を頑張れば、葵がおやつを準備してくれる。それも、ララの好みに合わせてくれようとしてくれている。

……優しいね、葵は……。

だから、人望も高かったりするのだろう。

他のクラスメイトの男子から何回か話しを聞いたことがあるが、やはり人気が高い。その優しさが、他の男子の心を掴んでいるのだろう。

しかし、ララが聞いた限りでは、他の男子は葵に下心を見せようとはしないらしい。やっぱり、護の存在が大きいらしい。

……どうしよっかな……。

ララとランがここに来るまでの間。勿論、護と葵が二人で勉強していたということになる。

他の青春部のメンバーを呼ばずに二人でしていた。ということは、少なからず、護は葵に惹かれているということになる。そういった気持ちが無いなら、こうして二人きりになったりはしないからだ。

……なら……。

どうにかして、二人きりになれるチャンスを作らなければならない。周りにランや葵がいないとなれば、より護も心を許してくれるかもしれない。ララ自身だって、もっと護に近づきたいと思える。

葵のはからいによって、こうして護への想いを確認することが出来たのだ。だから、今日、こうして与えられたチャンスを活用しないとならない。活用が出来るほどの立場にいる。

……さぁ……。


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