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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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恋の宣戦布告 #1

「説明…………? 」

ランの言葉に、ララは首を傾げた。

「はい。葵に嘘をつくのは、いけないことです」

……まぁ、それはそうだけど……。

「じゃ、ラン? 自分の気持ちに嘘はついて良いの? 」

「……ララは、本当に護さんのこと…………」

「まだ、分かんないよ……。ただ、ちょっと奪ってみたいかなって思ってる…………」

「勝てるんですか? 葵や他の人達に…………」

「どうだろうね。でも…………」

「でも? 」

「やってみないと分からないよね? 勝つか負けるかなんてことはさ」

「それでも…………、他の皆と同じ立ち位置に、私達はまだいませんよ? 」

「それなら、同じ場所に立てば良いんだよ」

「それは、告白するということですか? 」

「まぁ、そうなるかもね。宣戦布告だね、宣戦布告」


ララとランは、俺に聞かれないようにするためか、さっきまで葵がいた場所に座って、こそこそと話をしている。

そういう風にしているということは、俺に聞かれたくない話をしているのだろう。

気にならないと言えば嘘になるが、だからといって、聞き耳を立てるわけにもいかない。

それにしても、ランがここに来ると聞いた時、結構驚いた。袋を開けてみるとララもいたもんだから、余計にだ。

明日の夜、花火をすることが決まって、二人きりでいれる時間が減ったから、俺は、葵がそのことについて少し悲しんでいるもんだと思っていた。

もともと、俺と葵だけで勉強会という名目でここにいるからだ。

花火の件は仕方ないとしても、ララとランの場合は違う。断ろうと思えば断ることが出来たはずなのだ。そうであるのにも関わらず、葵は、ララ達を家に招き入れた。

葵のことだから、何か策があるのかもしれない。まぁ、それが何なのかは分からないけど。


「宣戦布告ですか」

「うん」

「まぁ、そこはララに任せます」

「ん、分かった。話はこれで終わり? 」

「はい」

……ふぁ……。

ララの中には強い想いがある。ランは、今の会話でそう思った。

護のことを好きにならないということを決めた時、少しばかりララは反対していたから、いずれこうなるかもしれないと思っていた。

だから、そこまでこのララの想いに驚いていない。

好きな気持ちがあったとしても、それが叶うかどうかは分からない。

特に、皆より後から好きになった場合。護の彼女になれる可能性は、ぐっと減る。それでも、ララは頑張ろうとしている。ランの目にはそう映った。

それがどういう結果になるのかは、分からない。

……頑張って、ララ……。

無論、自分は応援する立場に立つ。自ら、その恋の中には入らない。勝てないだろうし、そういう恋をしている人達を見る方が、何かと好きだから。


「ラン、ララ、護君。お待たせしました」

……あれ……?

冷たいお茶を持って部屋の中に入った葵は、ララとランの雰囲気に違和感を感じた。

ランな何故か申し訳なさそうな顔をしているし、ララは何かを考えているような顔をしている。

護と一緒の部屋にさせていたのが、少々悪かったのかもしれない。

雰囲気から察するに、何かがあったような感じがする。ララと護との距離が近くなっている。物理的ではなく。

自分と護とのノートの間に、持ってきたコップを置く。

「少し、遅かったな」

「そうですか? 」

「うん。僕もそう思ってた」

護の意見にララが頷く。

まぁ、少しのんびりしていた節はある。だけど、そんなに時間をかけていたつもりは全くない。

護のために冷やしておいたお茶を注いだだけだからだ。

無意識のうちに、ララとランに、護と長く話す機会を与えてしまったのかもしれない。

「ありがとうございます。葵」

ララより先にコップを手に取ったランは、護の左隣に座った。

「ありがとね。葵」

ララは、ランの逆の位置に座る。

……まぁ、仕方ないですね……。

自分の座る場所は護の前と決まていたから、必然的に、護の隣にララとランが座ることになる。四角の机だから、実質的に隣というわけではないんだけど。

「勉強しましょうか」

何も持ってきてなかったはずのララとランの手元。ララの手元には化学の問題集やらが。ランの手元には国語の教科書やらがあった。

護が、二人に貸したのだろう。

「おぅ」

「うん」

「はい」


……宣戦布告か……。

ランにそう言ってみたものの、ランは何をしたら良いのか分からない。

……恋の宣戦布告だよね……。

もう、護との絆がそこそこ築かれている葵達の間に、割って入ろうとしているのだ。

この構図だけを見れば、圧倒的に自分が不利である。ここから逆転して、護の彼女になるのは難しいかもしれない。いや、かなり難しいといえるだろう。

だとしても。

……諦めるわけにはいかないんだよねぇ……。

好きという気持ちは、まだ全然葵達に比べると浅いものだろう。しかし、一度、皆から護を奪いたいと思ってしまった以上、この想いを変えることは出来ない。

そのために、護を奪い取るために、何が出来るのかを考える。

……告白とかかな、やっぱり……。

葵、心愛、薫の三人が、もうすでに護に告白していることを知っている。告白をすれば、いまよりも距離を縮めることが出来る。

……あと……。

青春部の存在。たとえ、葵達に勝ったとしても、護を奪い取ることは出来ない。青春部にいる人達にも勝たないといけないのだ。

だけど、まだ青春部にどんな女の子がいるのかを、ララは知らない。何回か話を聞いたことはあるが、それだけのことでは分からない。実際に見てみないと。

……そうなれば……。

青春部に入ってみるのも良いかも、とララは思ってみたりした。

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― 新着の感想 ―
[一言] また増えたー。予想通りというかその為のキャラだろうけどあんまり増やすと一人一人の出番が薄くなると思うんだけどなぁ。そのせいか今まで読んできてお気に入りキャラなんて居ない訳だし。 それと護君と…
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