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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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予定の崩れ #3

「じゃ、化学と国語だな」

護はそう言いながら、化学と国語の問題集を鞄の中から取り出した。

……ん……?

護の顔が少し赤い。ララは、それを見逃しはしなかった。

自分がさっきからくっついているから照れているのかと、ララは考える。

だとしても、ララにはそんな女の子っぽい要素は無いと、自分自身で思う。

身長も女の子にしては高いし、髪は短いし、胸も小さく、自分のことを僕という。

だから、ララは、フランスにいる頃から、女の子とはあまり遊ばず男の子と遊ぶことが多かった。

身体を動かしたりして、運動をするのが好きだったからだ。

……でも……。

日本にやってきて、この高校に転校してきて、そんな自分が変わってきた。少なくとも、ララの中では。

「護は、どっちも得意だよね? 」

「まぁ、そこまでではないけどな」

さっきとは違う意味で、護が照れている。

「それに、葵には叶わないからさ」

「葵は凄いもんねぇ」

「あぁ」

やはり、自分を変えてくれたのは護かもしれない。葵や心愛、薫もその片棒を担いているのだが、その三人も、護の隣にいる時に、一番楽しそうにしている。

そんな三人を見ていると、自分だってその輪の中に混ざりたいと、自然に思えるほどだ。

護のことが皆好き。だから、そこの輪に入りたいと思える。

今、こうして葵の家で勉強してことを考えれば、輪の中には入れているのかもしれない。

しかし、実際の意味では入れていないのだ。

……好きにはなれない……。

葵、心愛、薫の三人が護のことかを好き。このことには、転校してきてすぐに気付いた。だから、自分達、ララとランは護のことを好きにならない、と葵に伝えた。

……何であんなこと言っちゃったんだろ……。

そう言ってしまったことを、ララは後悔する。

友達として大好きだ。そう護に伝えることは出来る。逆に、異性として好きだとは言えない。付き合って欲しいとは言えない。

……僕……。

ちょっとだけ、護のことを好きになり始めているのかもしれない。

昔は、男の子と遊んでいても、こんな感情を抱くことは全くと言っていいほど無かった。無かったから、護にも昔遊んだ男の子達と同じように接してきた。

しかし、最近それが出来なくなってきている。

三人の想いを再確認して、葵と直接護の話しをした。それからだ。

……奪いたくなっちゃった……。

そういう言葉が、一番しっくりとくる。

葵達から護の良さを聞きながら、自分も、少なからず護の温かさ、優しさを感じてきた。

実際、何かを護にしてもらった覚えはない。

それでも。

……ヤバイかも……。

「葵、遅いね」

「葵、遅いですね」

またそても、ララとランの言葉が重なった。

「そう……、だな」


「ふぅ…………」

ララとランの分だけ、冷たいお茶をコップに注ぎ込む。

「はぁ………………」

再度、葵はため息をつく。

もう部屋の中に入れてしまった以上、二人が帰るまでの間は護と二人きりになることが不可能になる。

……何で……。

ちゃんと二人きりになれるようにしていた。だというのに、企んでいた計画は崩れ去ってしまった。明日の夜も二人きりになれないから、これで大幅な時間、護と二人でいられなくなったということだ。

こんなことになるとは、当初は全く思っていなかった。

「……よし」

ここでララとランが来たのが、どういうことを示すのかを考える。これから先、どうすれば良いかを考える。

ララとランがいるが、二人は護のことを好きではない。二人から、以前、直接言われたのだ。葵達の気持ちを知っているから護のことを好きにならないと。

だからこそ、家に入れてしまったのかもしれない。別に、何も起きないから。護のことを好きになる可能性はないから。

だけど、好きにならないと思っていたとしても、好きになってしまうかもしれない。その可能性だけは、捨てきれない。

……観察です……。

こんなところで、ライバルを増やすわけにはいかないから。


「ララ、ララ」

まだ葵が部屋に戻ってくる気配が無かったので、ランは、護にくっついているララの太ももをツンツンとつついた。

「何…………? 」

こっちの方を見て言葉を返してはくれるが、護から離れようとはしない。

……護さんに聞かれるわけには……。

だから、ララを護から離そうとする。

「ひゃあぅ……っ!! 」

ランは、そのままララをつついた指を、すぅ、とその太ももを這わせた。

ランの予想通り、ララは護から飛ぶように離れた。

「お、おい……。ラン…………」

「すいません。ちょっと、ララを借りますね」

「お、おぅ……」

ララのキャミソールを引っ張って、護に聞こえないくらいの距離まで移動させて、ララの耳に言葉を囁く。

「どういうつもりですか……? ララ」

「何のこと………………? 」

「とぼけるつもりですか……? 」

「だから何なの? 僕……、何かしたかな………………? 」

「本当に分かってないのですか……? 」

「う、うん………………」

どうやら、ララは本当に分かっていないらしい。

「護さんのことです」

「ま、護のこと……? 」

「そうです」

さらに声を小さくして、ランは言葉を続けた。

「護さんのことは好きにならない、と決めたはずですよ? 」

「だけどさぁ………………」

「はい? 」

「実質、無理じゃない? 好きにならない、なんてさ」

ララの気持ちは分からなくはない。しかし、一回決めてしまった事項を、後から帰るわけにはいかない。

「葵にはどう説明するんですか? 」


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