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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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迷い人


どれくらいの時間が経っただろう。一分くらいなのか十分くらいなのか。はたまた、もっと経っているのか。

そんな時間の間、葵は、ずっと護に寄り添っていた。

扇風機から送られて来る風が、二人を涼しくしてくれる。しかし、葵は、暑いと感じていた。

そう感じるのであれば、護から離れれば良いのかもしれない。しかし、それは嫌だった。この護の温もりをずっと感じていたい、とそう思うからだ。

「ま、護君…………」

「ん……? 」

何度目かの問いかけに、護は優しく言葉を返してくれる。そうだからこそ、葵は、護に声をかけたのかもしれない。

「そろそろ……、勉強…………、再開しますか? 」

「あぁ。その方が良いかもしれないな」

「じゃぁ、そうしましょうか」

「了解」

護の了承の言葉を聞いたので、少し名残惜しかったが、護から離れた。

……後でやろうと思えば……いくらでも……。


自分の部屋に戻り、昼ご飯を食べる前に閉じたノートを再度開いて、勉強に集中しようとする。

しかし、一度傾いてしまった護への思いは、そう簡単には勉強に集中させてくれない。

何度も、何度も考えていたことだが、今は護と二人きり。何でもすることが出来るのだ。

護の方をちらっと見る。

「どうかしたのか…………? 」

目が合った。

「い、いえ…………。気にしないでください」

「そ、そうか……? 」

葵は慌てて、護からノートにへと目先を変える。

……はぁ……。

勇気が無い、と。葵は自分のことを思う。

本当に、今、この家には自分と護の二人しかいないのだから、何でも出来る。キスでも、何でも、自分に勇気さえあれば、することが出来るのだ。

しかし、今の自分にはそれが無い。もしかしたら、護にも無いのかもしれない。

……なら……。

一つ試してみたいことがある。葵は心に決めた。


「迷った………………」

少しばかり入り組んだこの住宅街に、一人の女の子の姿があった。銀髪の髪色からも、この少女の土地勘が、あまり無いということも分かる。

「案内してもらったはずなんだけどなぁ…………」

ぐるっと周りを見渡しながら、その少女は、はぁ、とため息をもらす。

「この辺りだっけ………………」

流れてくる汗を手で吹きながら、目的地の家を探す。

本当なら、事前に連絡して、迎えに来てもらうはずだった。だけど、そう話す機会がなかったのだ。

……仕方なかったんだけどねぇ……。

引っ越し後の色々とか、何やらで、とても時間を取ることが出来なかったのだ。そんなこんなで、勉強することもあまり出来なかった。

だから、こうして汗を流しながら、勉強を教えてくれるだろう相手の家を探しているのだ。

「メールアドレスも知らないし…………」

一ヶ月ほど前、この街を案内してもらった時に聞いておけば良かった、と後悔する。その時の時間が楽し過ぎて、すっかり忘れていたのだ。

「はぁ………………」

少女は再び、ため息をついた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 障害が来た。初期の告白3人組に優しくないなぁ
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