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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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二人きりでの勉強会 #4

「護君。出来ました」

護がいる方を振り向いて、護に声をかける。護の方に目をやると、護とバッチリと目があった。

「お、そっか」

恥ずかしさからか、護はすぐに目を離してしまった。

……護君……。

葵はエプロン姿。昼ご飯を作っていたのだから、当たり前といえば当たり前の姿である。

……そういえば……。

護の前でエプロンを着るというのは、これが初めて。

護を家に呼んだのは、これ二回目。一回目は、青春部の皆でいたわけだから、護本人を呼んだわけではない。

しかし、今回は、自分が護といたいがために、他の人より一歩先に行きたいがために、護を自分の家に呼んだ。無論、そんなのはこれが初めてだ。

男の子からしてみれば、女の子のエプロン姿というものは、何か響くものがあったりするのかもしれない。

「ま、護君」

もう作り終わったわけだが、葵はエプロンを着たままで、出来上がったそうめんを持ちながら、護の元まで行く。

何故、エプロンを着たままにしたのか。護に、よりよく自分のエプロン姿を見て欲しいから。

「ん? 」

「に、似合ってますか…………? 」

護の前に立ち、くるっと回ってみる。

「お、おぅ。似合ってる」

「ありがとうございます」

言葉だけを聞けば、お世辞だと思ってしまうかもしれない。しかし、護はお世辞を言わない。それは、これまで護のことを見ていて分かっている。お世辞では無いという証拠に、少し、護は目をキョロキョロさせている。

「護君」

「お、おぅ……。な、何だ? 」

「いえ。何でもないです」

ただ、護の名前を呼んでみたかった。ただ、自分が好きな人の名前を呼んでみたかった。

それだけでも、近くに護を感じることが出来る。それだけのことで、少し心が暖かくなってくる。

それほど、葵の中で護の存在というものは、大きくなってきているのだ。

「そ、そっか…………。食べようか」

「そうですね」

護の向かいではなく、護の横に、葵は腰をおろした。肩と肩がくっつきそうになるほどの、近い近い距離だ。

夏だから暑いとか、そんなことは全く思わない。だって、隣にいるのは護だ。どんな時でも、ずっと隣にいたいと思える相手だからだ。

「あ、お箸取ってきますね」

「分かった」

サッと二人分のお箸を手に取って、すぐに護の横に戻る。そして、護に手渡す。

「ありがと」

「いえ、気にしないでください」


うん。ピリ辛中華風そうめんというものは、中々美味しいものだった。

これまで、普通のそうめんしか食べたことが無かったわけだったから、何というか、新鮮な味だった。一回、家でも作ってみようかとも思う。後で、必要な調味料やらを、葵に聞くことにしよう。

「ありがとう、葵。美味しかった」

「ありがとうございます」

「このレシピはさ、葵が考えたのか? 」

「いえ、お母さんです」

「へぇ、そうなんだ」

「はい」

「暑い時には、ちょっと食べていて暑くなる食べ物を食べる方が良いって言いますしね」

「そうだな」

少しばかり、身体は温まってきている。というか、少し暑いくらいだ。

さっきは吹いてくれていた風も、今は吹いていない。風鈴の音もやんでいる。

「護君。扇風機つけますか? 」

「まぁ、そうだな」

「分かりました」

今更だが、葵は、キャミソールを着ていて、今は、キャミソールの上にエプロンを着ているということになる。珍しくショートパンツをはいていて、エプロンの下からは、輝かしい足がのぞいている。

夏で、暑いけど、葵にしては珍しい服装なのかもしれない。うん、悪くはない。

「つけました」

「おぅ、サンキューな」

隣に葵が戻ってくる。自然の風では無いが、涼しい。帰ったら、自分の部屋にも扇風機を出そう。そろそろ、扇風機無しでは過ごしていけなくなってきているかもしれない。


……少し暑いですね……。

少し辛い昼ご飯だったから、その影響もあるかもしれない。はたまた、隣にいる護の影響だろうか。身体が火照ってきてるのかもしれない。

……護君……。

何度も心で思っている名を、また繰り返す。胸の裡に、その想いを募らせる。そして、その想いを高めていく。ただ、相手に想いを伝えるためだけに。

まだ、告白は一回しかしていない。次、もう一回告白したいという気持ちもある。

しかし、今は、答えを保留してもらっている身だ。ここでもう一回告白して、また保留されたら、もう自分にはチャンスが無くなる。

自分が皆の中で一番。そう思ってはいる。何故か。そう思わないと、気持ちを保つことが出来ないのだ。

それぞれ、皆に、良い特徴がある。だからこそ、護は今、迷っているのかもしれない。

その特徴がある上で、どう護に自分をアピール出来るか。そこで、護の彼女になれるか、なれないかが決まる。

「ま、護君………………」

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