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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜六章〜
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二人きりでの勉強会 #3

「あ、護君」

そろそろお昼頃。お腹が空いたなぁと思いながら勉強していると、葵が呼び掛けてくる。

「ん? どうした? 」

シャーペンから手を離し、葵の言葉に応じる。

「お昼ご飯……。何か食べたいものありますか? 」

「そっか、葵のお母さん今はいないんだっけ? 」

「はい。だから、そろそろ作ろうかと思うんですけど…………」

時計を見上げながら、葵は言う。十二時前。そりゃ、お腹も減ってくるわな。

「そうだな」

「で、護君は、辛い物食べれますか? 」

「うん、大丈夫」

「そうですか。良かったです」

一体、何を昼ご飯に作ろうとしているのだろうか。

と、口には出していなかったが、察してくれたようで。

「辛いってほどじゃないかもしれないですけど、ピリ辛中華風そうめんを作ろうかと思います」

「そうめんか…………」

「定番ですけどね」

ちょっと笑いながら、葵は言葉を作る。

「定番だけど、夏って言ったらやっぱりそうめんとかだしな。俺は良いと思うぞ」

「ありがとうございます」

「もう、作り始めるか? そうめんだしすぐ作れるだろうけど」

「今から作りましょうか。お腹減っちゃったら勉強にも集中出来ませんし」

「そうだな」


勉強を、一旦横に置き、俺と葵は一回の台所まで降りた。

隣の和室と部屋の作り的に繋がっていて、その和室の向こうにある縁側から、良い感じの涼しい風が吹いてきている。

クーラーとかも涼しいが、こういう天然の風も良いものだ。風鈴の音も鳴っていて、その心地よさが、より涼しさを増すものになっている。

「護君」

「何だ? 」

「護君は、どれくらい食べます? 」

「どうだろうな。結構食べようと思えば食べれるけど」

「この前の時はかなり食べてくれましたもんね」

「まぁ、あの時はな…………」

そりゃ、あの時は無理にでも食べていたような気がする。だって、男だし? こういう時は、そういうところを見せないといけないだろうと、思っていた。少しばかり、気を張っていたのかもしれない。

今はそんなことはない。もう気のしれた仲間だし、そんなことを気にする関係ではない。

「じゃ、普通くらいで良いですか? 」

「おぅ、良いぞ」

「じゃ、私作りますんで、護君はゆっくりしていてください」

「いやいや。俺も手伝うよ? 」

「でも………、すぐ出来てしまいますし……」

「そっか…………」

言ってしまえば、茹でてしまえば終わるわけだ。少し工夫を加えるわけではあるが、手伝う必要は無いのかもしれない。手伝うほうが、無駄に時間を使ってしまうのかもしれない。

「うん、分かった。仕方ないもんな」

「すいません」

「気にするな。じゃ、待ってる」



「多分、十分もあれば出来ると思います」

和室の方に向う護を見ながら、片手でエプロンを取りながら言う。

「お、おぅ。分かった」

……ごめんなさい。護君……。

本当なら、護と一緒にご飯を作りたい。その方が、ぜったい楽しく作れるに決まってるからだ。

でも、今から作ろうとしているものは、すぐに出来てしまうもの。護の手を煩わせて作るものではない。

それに、今、ここで護と一緒に作れば、夜ご飯を作る時の楽しみが一つ減ってしまう。楽しみは、後に置いておくべきだろう。

「………………よし」

冷蔵庫の側に置いてあったそうめんが入っている袋を手に取り、その封を開ける。

一人一玉を普通と考えて、護の分は一玉多くする。

少し大きめの鍋を取り出して、水をいれ、火をかける。これが沸騰してから、自分の分一玉、護の分二玉を入れれば良い。

「えっと………………」

今、作ろうとしているのは、ピリ辛中華風そうめんだ。ただのそうめんではない。その分、少しだけ普通にそうめんを作る時より時間がかかる。

沸騰するまでの間に、少しばかり下拵えが必要。

普通サイズのボールを取り出してきて、そこに、油大さじ二杯、醤油大さじ二杯、砂糖小さじ一杯、酒小さじ一杯、豆板醤小さじ一杯、お酢小さじ一杯、を入れて、かき混ぜる。

茹で上がったそうめんに、これを絡めれば完成である。


「ふぅ…………」

畳の上に、ゆっくりと腰を下ろす。

本来なら、俺が誘ってもらった側だから、葵には休んでもらっていて、俺が作るという手もあった。

……まぁ、でも……。

葵のエプロン姿を見ることが出来たから良しとしよう。

考えると、今の葵と俺の構図は、どこぞの新婚さんみたいな感じになっている。葵がご飯を作ってくれていて、それを俺がこうして、その作っている後姿を見ながら待っている。

……誰かを選ぶか……。

それは、告白をされた時から思っていたことだが、真剣に考えれば考えるほど、俺に告白してくれた女の子の中から一人を選ぶというのは、中々難しいものである。一人しか選べないわけだから、苦渋の選択だとも言えよう。

時間が経てば経つほど、決めるのは段々難しくなってきている。だって、皆には、それぞれの良さがあって、皆好きだ。

全員と付き合うなんてことは絶対に出来ないわけだ。俺が皆のうちの一人と付き合えば、傷つく人が出る。苦しませてしまうことになるかもしれない。

それが、嫌なのだ。たとえ、避けられない道だとしても。


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― 新着の感想 ―
[一言] 偽善でしかないよね。結局最終的には選ばなくてはならないならずるずる引き伸ばすのは期待だけ持たせるだけで間違ってる。
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