水着選び 終了っ!
「ささ、これで終わりだね」
最初と同じように一階に集まり、杏先輩は、皆を見渡すように言う。
六時半。長時間続いた水着選びは、終わりを向かえた。
楽しかったが、いかんせん、長かった。まぁ、別に良いんだけど。
「お疲れ。護」
「はい」
隣にいた悠樹が、労いの言葉をかけてくれる。嬉しい。癒される。
「また、明日だね」
「そうなりますね」
何やら、杏先輩は、まだまだ物足りなさそうだ。俺は結構疲れてたりする。他の皆も、疲れてそうだ。まだ、朝と同じように元気さを保っているのは、杏先輩だけ。まぁ、こうだからこそ杏先輩だ、と言えるのかもしれない。
俺的には、ようやくこの水着から解き放たれることになる。
嫌だった、というわけではない。他の客からの視線がグサグサ刺さってくるのだ。痛い痛い。
「じゃ、帰ろっか」
杏先輩の合図で、このデパートから出ることにした。
やはり、こういう時に発揮される杏先輩のリーダーシップは、こちら側としてはありがたい。
人の上に立ち、他の人を引っ張るってのが苦手だからだ。
杏先輩について行くように、皆でゾロゾロと駅に向かった。
「ふぅ……………………」
家に帰ると、すぐに自分の部屋に戻って、ベットにどさっと倒れ込んだ。
家に着いたのは、七時ごろ。
御崎駅からここまでが近いから、こんなに速く帰ってくることが出来たが、成美やらは遠いから大変そう。
「護」
ノックとともに、姉ちゃんの声が聞こえる。
「何……? 」
ベットから起き上がり、俺は姉ちゃんを部屋にいれる。
「今日はお疲れ。大変だったみたいだね」
「まぁな………………」
ん? 大変だったみたい? どこかで聞いたかのような口振りである。
「誰かから聞いたりした? 」
「ん? あぁ、魅散から聞いたよ」
「魅散さんから? 」
「うん」
てっことは、あの時感じた視線は、魅散さんの視線だったということになる。何で、そんな場所にいたのだろうか。魅散さんがいたということは、雪ちゃんもいたのだろうか。まぁ、見られたからといって、困るわけじゃないから良いんだけど。何か言われそうな気もする。
「楽しかった? 」
「まぁ…………。こんなこと初めてだったけどな」
「普通、無いわよ。女の子の水着を九人一気に選ぶってことは」
「そうだな」
「九人ってことは、昨日お見舞いに来てくれた女の子全員だよね? 」
「そうなるな」
「ふぅ……ん。お父さんと似てるねぇ」
何かそのセリフ、前に母さんからも聞いたことがあるようなそんな気がする。父さんと似てるところか。まぁ、血が繋がってるわけだし、そりゃ、似てるだろう。女の子とよく遊んでいる、ってところが似てるのだろうか。
「まぁ、ゆっくり休んでよ? また熱出されたりしたら、心配だから」
「うん、分かってる」
「それじゃ、これで」
「おぅ」