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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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水着選び 第二弾っ! #3

「待ったか……? 護」

四階に辿り着いた佳奈は、すぐに護の姿を発見することが出来た。近くに設置されている一つのベンチに座っていたからだ。

……本当に水着しかないな……。

一応そういう感じだとは聞いていたが、聞くと見るのとでは、全然違ったりすることもある。

このフロアに来て、目に映るものの大半は水着である。こんなたくさんある中から一つと決めるのは大変そうだと、佳奈は思う。

「あ、いえいえ。大丈夫ですよ」

「そうか」

たとえ待っていたとしても、護なら「大丈夫」と答えてくれると思っていた。

包み込んでくれるような優しさが、護にはある。これは、青春部の皆、そして真弓も思っていることだろう。だから、護の隣にいると安心出来るし、一緒にいて良かったと思えるのだ。

「もう、風邪は大丈夫か…………? 」

護が立ち上がろうとしたのを制止して、護の横に座ろうとしながら、佳奈は言葉を作る。

「あ、はい。もう大丈夫」

「またなるかもしれないから、気を付けるんだぞ? 」

「分かってますよ。あ、それと…………、佳奈」

……呼び捨てにしてくれた……。

「ん? どうした…………? 」

「俺が風邪引いたことに…………、負い目を感じないでください」

「どうしてだ? 私を看病してくれたから、護は風邪をひいた。この因果関係は成立するぞ? 」

「ですけど……、俺は佳奈の側にいたかったから、そうしたんです。移ってもいいと思ってましたし」

照れているのか、護は少しばかり、頬を朱に染めている。

「護…………………………」

「だから、気にしないでください」

……あぁ……。

これが、護なのだ。この優しさを持つのが、護なのだ。

謝りたいという気持ちの裏に、優しさを感じたい、という思いがあったのかもしれない。

だから、護から受ける優しさ(、、、)というものに惹かれるのだろうか。

「なぁ、護…………? 」

ゆっくりと、佳奈は口を開く。

「どうかしました? 」

「いや…………、やっぱりいい……」

喉元まで来ていた言葉を、佳奈は、無理矢理胸の内に戻した。今ここで、言うべきことではないのかもしれい。

「そうですか? 気になりますけど…………、聞かないことにします。言える時になったら、言ってください」

「あぁ…………」

「水着…………、買いに行きましょうか。今日の目的はそれですし……」

「そうだな……」

先に立ち上がった護に倣うように、佳奈も腰をあげる。

「それにしても、凄い数だな」

「えぇ…………」

護は男の子だ。だから、こんな場にいると、少し居心地が悪いのかもしれない。

「期待しているぞ? 」

「応えられるかどうかは些か不安ですが……、任せてください。頑張ります」

「あぁ」



佳奈には、凛々しいとかそんな風なイメージがあるから、寧ろ、花柄とかファンシーな感じのやつを着せてみたら、案外似合うかもしれない。

佳奈の家のあの庭園は咲夜さんが作ったものだが、佳奈自身も、花とかを愛でるのは好きだと思う。一緒に植物園にも言ったわけだし。

……さて……。

これで、大体の雰囲気は決まった。後は、どんな形の水着を選ぶかだ。

被らないようにはしたいから、余計に考えないといけない。

まぁ、こうして何時間も女の子の水着を見ていると、本当にたくさんの種類があるんだなぁと思う。

「決まったのか…………? 」

「あ、まぁ…………。大体は」

「そうか」

佳奈の表情は、いつもより柔らかいものに見えた。楽しんでいるように見えた。それは、佳奈だけに限ったことではないんだけど。

俺は佳奈から視線を外して、周りを見てみる。

頭の中に構想はあるのだが、その俺の構想に合う水着が無かったら意味が無いからだ。まぁ、こんなにあるから、さすがに大丈夫だとは思う。

「これ…………、かな」

俺が手に取ったのは、花柄のパレオが付いている水着だ。花柄なのはそのパレオの部分だけで、その他のところは、青色一色の色である。

「パレオか…………」

「えぇ」

ちなみに、このパレオの部分は、取り外しが可能になっているらしい。

「ここって……、試着出来るのか? 」

「出来るみたいですよ」

「なら、一回着てみても良いか? 」

「はい。俺もどんな風になるのか見てみたいですし」


……ふぅ……。

今度は、近くに試着室がなかったので、数分、試着室を捜す羽目になった。

カーテンで仕切られているこの一室には、佳奈がいる。

カーテンなので、パッと開けてしまえば、そこにはパラダイスがあるだろう。その後には、地獄が待っているかもしれないが……。

今思えば、これは凄いことなのかもしれない。まぁ、そんなことはしないけど。


「すぅ………………はぁ………………」

試着室に入った佳奈は、ゆっくりと深呼吸をした。気分を落ち着けるために。

水着姿を見て欲しいと言ったから、このカーテンを開けた先には、護がいてくれる。

たったカーテンという仕切りでも、こっち側とあっち側とをきちんと別けるものになっている。

だから、その気になれば、こっち側に護を引き込むことも出来るのだ。

……杏がしそうだな……。

強引なところがあるからな、と、佳奈は、心に思ったことに付け足す。

試しに、護を引き込んでみても良いのかもしれない。

しかし、そうしてみたところで、その後何をしたら良いのかが分からない。抱きついてみたりしたら良いのだろうか。

……何を考えてるんだ、私は……。

早く着替えないといけない。こんなところで時間を無駄にするわけにはいかないし、護を待たせるわけにはいかない。



「似合ってますよ」

「そ、そうか……。ありがとう」

早々と水着に着替えて、佳奈は、護の前にその水着姿で出る。

護にこの姿を見せたかったからこうして出てきてるわけだが、いかんせん、恥ずかしい。こういう恥ずかしさがあることを、佳奈はすっかりと忘れていた。

褒めてもらえればそれだけで良かったたから、その他一切のことを全く気にしていなかった。

「は、恥ずかしいものだな…………」

「ま、まぁ…………」

そう言うと、護も少なからずそういう感じがあったらしく、佳奈と同じように顔を赤らめた。

「これにする。護が褒めてくれたからな」

「ありがとうございます」

「じゃ、着替え直してくる。も、もう……、十分に見たよな? 」

「え………………? 」

「い、言わせるのか…………? 私の水着姿……、十分に見ただろう…………? 」

「え、あ…………、はい」

その水着のパレオをサッと靡かせるように、佳奈は急ぎ足で試着室の中に戻った。


レジで会計を終えて腕時計に目をやると、四時半だということを知らせてくれた。

護と二人きりでいることが出来る時間は、後三十分ほど。

案外、淡々と進んでいったので、佳奈が思っていたより時間が余ってしまった。

「まだ時間……、ありますね」

「そうだな」

この後は葵の番だから、護を葵に渡すということになる。護と葵が二人きりになるのだ。

……うーん……。

残り時間は三十分。この時間の間であるなら、誰にも邪魔されることなく護と一緒にいることが出来る。こういう機会は、もう無いかもしれない。

「なぁ…………、護? 」

「はい? 」

「また……、私の家に来ないか…………? 」

「それは構いませんけど…………、時間とか、どうするんですか? 」

「そうだな…………」

護の為であるなら、無理にでも時間を作り出して護を家に招待したい。

咲夜だって、護にまた会いたいと、そう言っていた。

出来ることなら、また護と二人きりになりたいが、咲夜が家を出ることはあまりないので、それは難しいことかもしれない。

「まだ先だが……、期末テスト明けとかどうだ? 」

「その辺が妥当かもしれませんね」

「ん。まぁ、そう考えていてくれ。日にちとかは、また言うから」

「分かりました」

……よし……。

これで、護を家に呼ぶことが出来る。後は、このことを周りに、特に、杏に知られないようにするだけだ。せっかくの護といれる時間を、邪魔されるわけにはいかないから。





「じゃ、また後で」

「あ、はい」

佳奈の水着選びが終わった今、時間は四時半を過ぎようとしているところだった。

時間が経つのが速く感じてしまう。水着を選ぶ、ってのが、楽しいからかもしれない。

ここまでで選んだ水着選びの数はは、七つ。残りは、葵と成美の二つだ。

この辺りで、今まで、どんな水着を選んだかを振り返っておこう。

心愛のはセパレートタイプで、白とピンクのボーダー柄の水着。

渚先輩に選んだのは、ペイズリー柄で、下がショートパンツになっていて、上はホルターネックでリボンにはビーズの飾りが付いている水着。

薫には黒のチェック柄のビキニで、下はミニスカート付きのもの。

悠樹のはチューブトップの水着で、胸元にはレイヤードフリル 柄は白と水色の水玉模様のやつ。

杏先輩のも黒のビキニだが、 少し長めのスカートがあり、白のレースが付いていて、小悪魔感がある水着。

真弓は青色のセパレートの水着だが、ワンピースが付いていて、その水着は自由取り外し可能だ。

佳奈には、花柄のパレオがついている青色のビキニ だ。

重ならないように、重ならないようにとしてきたが、こう思い返してみると、案外色とかが重なっている。いやぁ、難しい。

次は、葵の番だ。さて、どんな水着を選ぼうか。悩むところだ。


……やっとです……。

ようやく、ようやく、自分の番が回ってきた。

待ちに待った自分の番だ。

待った時間は長かった。最後から二番目、という順番をひいてしまったから仕方ない。

しかし、やっと、護と二人きりになることが出来る。

……護君……。

今後、期末テスト前にも二人きりになることが出来る。自分の家で、二人きりになれるのだ。その時に繋げられるように、今日のこの後の時間を使いたい。

……行こ……。

少し高くなってきた気持ちを落ち着け、護が待つ四階まで足を進めた。


「お、葵ー」

じっと待っているのもあれだったので、俺は、エレベーターから葵が来るのを見て待っていた。

「あ、護君」

こちらに気付いてくれた葵は、エレベーターを駆け上がってくる。

「待たせちゃいましたか……? 」

「あ、違う違う」

「そうですか。良かったです」

葵は、ホッとむねを撫で下ろす。

「結構時間経ってしまいましたね」

「そうだなぁ……。待ってる間は、何してたんだ? 」

「この下の階で、服見てたりしてましたよ」

「へぇ、そうだったんだ。じゃ、そこまで暇では無かったんだな」

「はい、そうですね。見に行きましょうか。水着。時間も決められてるわけですし」

「あぁ、そうだな」



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