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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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違和感

おかしい。

杏の隣に座っている悠樹は、今の杏の行動を見て、そう思った。

はっきりと、杏は護の名前を呼んだはずだった。その杏の声は、悠樹にも聞こえていた。しかし、護に聞かれて、何も無かったかのような返事をしていた。

いつも通りの杏であるなら、ここで話に割って入ってるはずだ。

いや、そもそも青春部で集まっている時に、杏が話題の中心にいないということ自体が珍しい。

……何か企んでいる……?

いつもよりしおらしい杏を見て、悠樹はそう感じ取ることが出来た。

次は杏の番だ。だから、それを考えていて、静かになっているのなら、何ら問題は無い。

しかし、それにしても、杏は、いつもより静かすぎるのだ。

佳奈の次に青春部に誘われた身として、杏のことは、少なからずよく知っているはずだ。だからこそ、今の杏に恐怖を感じる。何か、やってくるんじゃないか、という恐怖を。

悠樹は、護のことが好きだ。その気持ちは、誰にも負けていないと自負している。

だがしかし、選ぶのは護だ。自分達ではない。だから、皆、振り向いてもらえるように、アタックをしかけているのだ。

「………………よし」

悠樹の耳に、そんな杏の小さな小さな声が聞こえた。この音を聞き取れたのは、恐らく悠樹だけだろう。慌てて他の皆を見てみたが、それに反応を示している者はいなかった。

悠樹は、ゆっくりと杏に視線を送る。

「……………………っ」

杏の目に、覚悟が灯った。

こんなに、気合いを外に出している杏を、悠樹はこれまで見たことが無かった。

瞬時に、悠樹は思った。

……取られる……。と。


……ん……?

護の話に相槌をうっていた佳奈は、一つの違和感を感じた。

……悠樹……?

悠樹は、何故か杏を一点に凝視していた。その悠樹の顔には、少しの恐怖が浮かんでいた。

……そういえば……。

杏は、さっき、護の言葉を予期していなかったかのような返事をしていた。

ボーッとすることなど、誰にでもある。しかし、杏のそれは、その表現では表しきれないようなものだった。

何かを考えているように、佳奈の目には映った。それも、強い意思を持って考えているように。

幼馴染として、友達として、親友として、杏とずっといた佳奈であったが、こんな杏を見たことが無かった。

……何をしようとしてるんだ……?

それゆえ、何故、杏がそうなっているかが分からなかった。

次、水着を選んでもらえるのは杏だ。しかし、ここまで気合いを入れるようなものではないと、佳奈は思っていた。

……杏の中では違うのか……?

何か、ここで決めようとしているようにも、佳奈の目には映った。

……杏……。

同じ気持ちを抱いてる者として、今、杏が何を考えているかが分かった。

護との距離は、それなりに縮まってきているはずだ。家にも来てもらったし、一緒に寝たし、看病もしてもらった。

だから。

……負けるつもりはないからな……。


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