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せいしゅん部っ!  作者: 乾 碧
第一編〜五章〜
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杏の想い

……ふふっ……。

杏は護といると、護のことばかり考えてしまい、護を思うにつれて起こる様々な感情が、心にまつわりついて離れない。

護と初めて会った時、すなわち、今から約一ヶ月前。自分が護に惹かれることがあろうとは、一切思っていなかった。

護に魅力がなかったというわけではない。もうその時点から、護の隣には、心愛、薫、葵の三人がいた。

その時に、杏は思ったのだ。この男の子を好きになったとしても、その恋は絶対に叶わないと。なんたって、三人の想いの強さが感じられてしまったから。

だから、杏は、三人を応援しようと決めた。今日までの間、それに基づいて行動してきたはずだ。

しかし、気付いたら護のことを好きになってしまっていた。いや、前から好きだったのかもしれない。そんな思いを、知らず識らずの内に心の奥底にへとしまっていたのかもしれない。

はっきりと、この思いを自覚したのは数日前、護の家に泊まった時の夜だ。

一度強く想ってしまうと、もうこの気持ちを変えることは出来ない。だから、他の皆にチャンスを与えつつ、自分にもチャンスが巡ってくるようにと、護と二人きりになれる時間を、最長一時間とした。

もし、今日自分の思いが叶ってしまうのなら、それは麻姑掻痒。そんなに思い通りに進んでしまうと、返って怖くなってしまう。

これまでが上手く行き過ぎていたのだ。

護は、自分がこう言えば、それをしてくれようとする。自分のことを第二に考え、他人のために行動することが出来る、そんな男の子だ。だからこそ、自然と惹かれたのだろう。

「……………………」

隣に座っている護は、楽しげに薫達と話している。護の周りには、常に女の子がいる。折花攀柳、百花繚乱ということだ。

次は自分の番だ。護に水着を選んでもらえる。

……ふぅ……。

杏は、また、誰にも気付かれないように舌舐めずりをした。

この恋は、叶えられるかどうか分からない恋だ。ライバルが多すぎる。しかし、だからといって、弱気になるわけにはいかない。弱気になれば、自分に巡ってくるチャンスは減るし、叶うものも叶わなくなってしまう。

「………………護」

愛おしく、愛おしく、護の名前を口にする。気付かれないようにだ。

まだ、自分の思いに気付かれてはならない。やるならやるで、驚かせてやりたくなる。

「杏先輩……? 呼びました……? 」

「にゃっ………………!? い、いやいや……、何でも無いよ」

「そうですか…………? 」

どうやら、声は護に届いてらしい。

……はぁ……。

いつもの自分であるなら、ここで話に入っていけるほどの行動性みたいなのがあった。しかし、今日の杏はそう出来なかった。

何かが、杏をそうさせていた。

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