トリ・プレリュード
「その男の子………………は……? 」
栞の隣に立っている羚を見据えるように、雪菜は言った。
「彼氏とかなのかなぁ…………? 」
栞が答える前に、魅散が雪菜の言葉に続けて声を作った。
「な……、にゃ……………、な………………、ま、間違っては…………、いないけど…………」
栞は、顔をかぁっと赤らめながら、隣にいる羚を見つめながら言う。
「へぇ…………、ふぅん………………」
栞と同じように顔を赤くしている羚を、魅散はジッと見る。
「護君と似てるところがあるかもねぇ〜」
うんうんと、魅散は、頷くという動作を加えた。
「護のこと…………、知ってるんですか? 」
魅散のその言葉に、羚は、驚きを持って答える。
「知ってるよ? ずっと昔からね」
「そうなんですか。あ、聞きたいことがあるんすけど、俺が護と似てるって、どういうことですか? あいつと似てるところなんて無いと思ってるんすけど…………」
「ありゃ? 気付いてない……? 」
「え、えぇ…………」
「そっか…………。栞は、彼氏さんと護君との共通点、分かるよね? 」
「う、うん……」
突然話を振られた栞は、頷くしか出来なかった。
鈍感さ、というものを含めて、護と羚との共通点は少なからずある。
だけど、栞は護より羚を選んだ。それは、凛も楓も同じだ。
「で、栞はどこを好きになったの? 」
「どこってのは分からないです」
どこが好きなのか。唐突にそんなことを言われても、すぐには考えられない。
好きだから好き。理由なんて、それだけで十分だ。
好きな理由を装飾付けするより、ストレートに言う方が想いは伝わるし、そっちの方が栞は好きだ。
「どういうこと……? 」
「好きだから好き。ただ、それだけです」
心の中で思ったことを、魅散にぶつけた。
「なるほど………。で、名前何て言うの? 」
「あ、羚君です」
羚の手を手に取り、栞は言う。
「羚君」
「あ、はい」
「栞良い娘だから、取られないようにね……? 」