偶然
そんなこんなで、フードコートに到着したのは十二時半ころだった。
デパートを出てから、葵の案内で、適当なフードコートに向かうことになった。
いつも通り、杏先輩と真弓が仕切ろうとしていたのだが、そんなんでは時間がかかってしまうと思ったのか、葵が自ら言ってくれたのだ。
当たり前だが、葵の家はここの近くなので詳しいというわけだ。
まぁ、どこもかしこも人がたくさんいたりしたが、ギリギリ入ることが出来た。それであっても、十人がひとまとまりになるのは大変だったのだけれど。
オムライスやハンバーグやその他諸々、十人分の会計を見ると、そこそこ高い金額になっていた。いやぁ……、恐ろしい……。
「戻ってきたね」
昼ご飯を食べ終り、デパートにへと戻ってきた時には、もう一時半になろうとしてるところだった。これから、水着選び第二弾の始まりだ。
……さぁて……、どうしよっかなぁ……。
杏は少し考える。どうアプローチをしようかと。どうしたら、自分のものに出来るのかを。
同じ時間。護達がデパートに戻ってきた時間。護と杏がこれから向かおうとしている四階に、別のペアが二組みがそこにいた。
雪菜と魅散のペア。羚と栞とのペア。
どちらのペアも、このデパートに来た目的は同じ。水着を買いに、という目的だ。
ちなみに、どちらのペアもお互いが同じ階にいることを知らないし、護達がいることも知らない。全て、偶然の出来事。
「あ…………、栞ちゃん………………? 」
「…………え、雪菜ちゃん……? 」
お互いのペアは、偶然
鉢合わせた。
雪菜は、栞が男の子と二人きりでいることに、栞は、羚と二人でいるところを見られたことに、驚く。
その驚きは、栞の方が遥かに上だった。
「えっ……!? な……、な、なんで……、雪菜ちゃんが…………、ここに………、い……、いるの…………? 」
突然目の前に現れた雪菜に対して、栞は、完全に平生の自分を失っていた。
「そ…………それは……っ! こっちの…………、セリフ…………」
雪菜も、いつにも増して、声が大きくなっていた。
「なんか面白いことになってるねぇ…………」
そんな様子を見ていた魅散は、ニヤニヤと笑いながらそう声を作った。
そんな魅散とは反対に、羚は、この状況を理解出来ていなかった。
「………………友達か…………? 」
「そ、そうだけど…………」