昼ご飯
もうこの時点で、悠樹は、このチューブトップの水着を買うことに決めていたが、他のも着てみることにした。
ワンピースだったり色々だ。
自分を見て欲しいという悠樹の思いが、自分自身をそうさせた。
「どれが、一番良かったですか? 」
「最初の水着」
「俺も、あれが悠樹には一番似合うと思ってました」
だからこそ、最初にそれを選んでくれたのだろう。
「ん」
「後、時間二十分くらい余ってますけど…………、どうしますか? 」
「皆の所に戻る」
まだ少し、喋っていたいという気持ちはあった。しかし、話すだけなら、いつでも可能だ。二人きりではなくなるというのは、残念なのだが。
「分かりました」
「ただいま戻りました」
「うん、おかえり。護」
一階のエレベーター横に多く設置されているベンチに戻ると、約束通り、皆がそこで待っていてくれた。
あ、さっきまで俺と悠樹は手を繋いでいたが、今は離している。
悠樹の悲しそうな顔を見るのは少し忍びなかったが、いかんせん、手を繋いだままで、ここに戻ってくることは出来ない。何をされるのか、分かったもんじゃないし……。
「昼ご飯…………、食べに行くんですよね? 」
ベンチからさっと立ち上がった杏先輩に、聞いてみた。杏先輩に倣うように、心愛や薫達も立って、皆集まってくる。
「うん、そうだよ」
「どこで、食べるんですか…………? 」
少なからず、このデパートでは無理だ。このデパートは、服やらを中心に売ってるみたいだし。
「……。どこで食べたい…………? 」
一瞬の間を置いて、杏先輩は聞き返してくる。
「決めてないんですか…………? 」
佳奈せ……、じゃなかった……、佳奈や他の皆に目をやってみても、杏先輩と似たような表情を浮かべている。
どうやら、皆してどこで食べるのかを忘れていたらしい。俺と悠樹が選んでる間、一体何をしていたのやら……。
「だ、大丈夫じゃないかな? 」
真弓が声をあげる。
「この辺りって色んなお店があるから、適当に歩いてたら、良いお店が見つかるよ……」
「そりゃそうですけど…………」
どこに行くのかが問題だ。
お金の心配がある。俺の場合は、今からの昼ご飯でしかお金を使わないわけだが、他の皆は水着を買うわけだからそうはいかない。
四千円くらいから六千円くらいまで。ここまでに俺が選んだ四着の水着は、これくらいの値段だった。
まぁ、これが高いのか安いのかは分からないけど。
「じゃ、探しに行こう。昼ご飯を食べる場所を」
「そうですね」
昼時だし、時間を食っていたら、良い店が人がいっぱいで入れないなんてことがあるかもしれない。
出来るだけ、それは避けたい。食べ終わった後も水着を選ぶわけだから。