羚と青春部絡みの話
「おっ! 羚!」
「護か。あれ? 今日は、成宮さんとかと一緒じゃないんだな」
「あぁ、今日はな。なんか用事があるから先に学校に行くって言われてさ」
「へぇ」
俺は、久しぶりの一人での登校を楽しんでいた。いや、楽しんではいない。一人でいるとやはり暇だ。周りに元気なやつが揃っていると、増してそう感じる。
「そう言えばさ、羚は部活にはいってんのか?」
昨日の青春部のこともあったから、俺は羚に部活の話題を振った。
「部活か? いや、俺は入ってないが……。なんか良い部活でもあるのか?」
「いや、そういうわけではないが……………………」
しかし、昨日行った青春部の先輩方は女子しかいなかったわけだし、もしかすると薫や心愛、葵も入るかもしれないわけで、その面で考えると、こいつにとったら良い部活というものに当てはまるかもしれない。
「あ、そう言えば……、青春部って知ってるか? 」
羚の口から、青春部という言葉が聞こえた。俺が、言おうかどうか迷っていた言葉だ。
「な、何だって?」
「青春部だよ。青春部」
ここはどう答えるべきなのだろうか?
「まぁ、知ってるよ。昨日も行ってきたとこだし」
こういうと案の定、羚は食いついてきた。
「マジか! で、で、どうだった?」
近づいてくるんじゃない。顔が近い。むさくるしい。
「どうって言われても……」
「男子の中では、青春部の面子は可愛い、って話があがってるんだ」
(ほぅ)
そんな話があったのか。俺の耳には入ってこなかったが。
改めて、昨日会った先輩達の姿を思い出す。
部長さんは可愛いだろう。薫、心愛に少し似てる部分もある。麻枝先輩は、生徒会長としての気品もあるし、どっからどう見ても清楚でクールだ。高坂先輩はクールといえばクールかもしれない。いや、あれは全然喋らないということだけなのかもしれない。まぁ、一般論とすれば可愛いだろう。
まだ後二人いるとは言っていたものの、あながち、この噂は的を射ているのだろう。
「で、どうなんだ? 」
「まぁ、その噂は間違ってない」
「そういうお前は部活入ってるのか?」
「いや、入ってないよ。入るつもりはあるけど」
「どこにだ? 」
「青春部に」
羚の目が光った。
「いやいや、誤解しないでくれ。俺一人ではいるわけではない」
「どういうことだ?」
「葵や心愛、薫達と一緒に入る予定があるんだ。誘われたからな」
「そうなのか」
羚が黙る。
「どうしたんだ?」
「いや、何でもない。まぁ楽しんでくれ」
羚はそう言うと俺をおいて、すたすたと歩き始めた。
「おい、ちょっと待て! 歩くの早いぞ!」