ある日
インターホンが鳴った。
その時俺はやらなくてはいけない事を全て投げ捨てていた。
ただ面倒だった。
出るか出るまいか考えていたとき、もしかしたら「いつかに応募した懸賞があったたのかもしれない」という考えが腐った頭によぎった。
具の無いラーメンをそのままに、サンダルを履いて俺は古くガタの来たドアを開けた。
来客は母親の兄のようだった。
東京からMTBできたようで、道に迷った、と笑っていた。
中でお茶でも、と言う俺にすぐ帰る、という近くて遠い兄。
そしてその兄は帰っていった。
一人でドアを開けて、鍵もチェーンも閉める。
途端、目の前が滲んで捩れた。
ぼろぼろと目から涙がでてきて、鼻からは鼻水が止まらない。
何故かは判らなかった。
だけど、一人でうずくまって泣いていた。
判らない。
分らない。
解らない。
みっともないと思った。
なさけないと思った。
だけどそれ以上に、わからなかった。
だから、先に逝ったあのお馬鹿なわんこの首輪を握り締めて、ただひたすら泣いた。
伸びきった麺と温いスープを無理矢理胃に落とし込んだ。
飲み込みたいのは麺でもスープでもない、情けなさか、みっともなさか。
だから、泣いた。
そして今、俺はパソコンに向かう。
種から花を咲かせるように。
無いものをあるものに変えるように。
夢を現実にする為に。
またきっとしばらくしたら俺は腐る。
失ってからでないと気付かない大切な物を失って、悲劇によって、気取って、他人の同情を
欲して、繰り返す。
どうしようもない人間だ。
そう気付いたからか、
そう気付けたことが嬉しかったのか、
そう気付いたことが嫌だったのか、
俺にはわからないけれど、
ただ、今でも、泣いていた。