魔法の指輪――どんな願い事でも、叶えます! …でも、代償は戴きますよ!!…きっちり、お支払い下さい!…命がけで!!
「何でも願いが叶う」 そんな甘い言葉の裏には、必ず代償があるものです。 前作『カゲムシャーン』に続き、今回は「執念」と「代償」の物語をお届けします。
最後までお楽しみいただければ幸いです。
私は、A子。
B子とは昔からの腐れ縁だ。そして、超絶、最悪に仲が悪い。
私たちは顔を合わせれば、いつもいがみ合っている。
……最悪!!
B子のことは、何もかもが気に入らない。 あいつの野暮ったいファッションセンスは見てるだけでイラつくし、あいつが選ぶ店も、喋り方も、すべてが鼻につく。
……正直に言おう。まさしく遺伝子レベルで、私はB子が嫌い!憎い!!
もっとも、自分自身のファッションに100%満足しているわけでもない。私はそれくらい、美へのこだわりが人一倍強いのだ。
私の夢は、自分のブランド会社を設立すること。
自分でデザインしたブランドで着飾り、B子を見返してやりたい。
B子も同じようにブランド設立を狙っているようだけど、あいつにだけは、絶対に負けたくない。
そして、何よりも許せないのは……好きな男性が、いつも重なること。
あの人だけは、絶対に私のものにしてみせる。それだけは譲れない。
そんなある日のこと。
いつものように衝突するかと思いきや、B子の方から話しかけてきた。
「……ねえ、私たちの関係についてだけど。私も、今まで我を張りすぎていたわ」
B子は、妙に憑き物が落ちたような顔をしていた。 「和解の印に、あなたに良いものをプレゼントしてあげる」
……意外!!
差し出されたのは、銀の指輪だった。
「魔法の指輪よ。呪文を唱えれば魔法の魔神が登場するから、何でも頼めばいいわ。どんな願い事でも、叶えてくれるから」
「……はぁ? 何でそんな凄いものを私にくれるのよ。その魔法で、自分が幸せになればいいじゃない」
「私は、もう……充分すぎるほど、色んな願い事を叶えたから」
そういえば、最近のB子は、あの男性にも全くアプローチしていないようだ。
指輪の内側には、持ち主である「B子」の名前が刻印されていた。B子はすました顔で立ち去り、私はその指輪を手に入れた。
添えられていたメモ用紙には、呪文らしきものが書かれていた。
その呪文は『イコテデンジマ』。 逆さに読めば「魔神、出てこい」。
何だ、こりゃ?
バカバカしいけど、だまされたつもりで、叫んでみた!
「イコテデンジマ!」
私が唱えると、指輪から黒い煙が立ち昇り、不気味な大男が姿を現した。
……興奮!!
まさか、本当だっただなんて……!!
「……貴方に言えば、私のどんな願いでも叶えてくれるの?」
「さようでございます」
「つまり、貴方は私の言いなりなわけね?」
「さようでございます」
「えらく弱い立場ね! 同情するわ!」
「私の職業をどう捉えるかは、ご主人様のご自由でございます」
……奇跡!!
それからの生活は、まさに奇跡の連続だった。
憧れの彼はB子を捨てて私に求婚し、私は念願のブランド会社を設立した。
私が社長。私の会社。
業績は右肩上がり。どんな苦境も、魔神に命じれば一瞬で解決した。
それでも、社長業は辛く、キツい。
私は魔神に願った。
「強い精神力が欲しい! 誰にも負けないメンタルを頂戴!」
魔神はそれさえも叶えた。
私は今や、経済界で「アイアン・ハート」「メタル・マインド」とあだ名される最強の鉄の女社長となった。
おかげで、社長業は完璧に全うできた。
魔法の指輪さえあれば、どんな奇跡でも起こせる。私は、自分のブランドで世界を着飾る女王になったのだ。
けれど、一つだけ解決しないことがあった。 夫との愛が、ある程度以上進展しないのだ。キスすら、させてもらえない。
「まさか、夫は今でもB子を愛しているの?」
愛が深まるよう魔神に頼んでも、魔神は何もしてくれなかった。
「その願い事だけは、お引き受けできません!!」
……不思議!!
……やがて、私の体は急速に衰え始めた。
顔色は土色になり、立っていることすらままならない。金に任せて名医に診せても
「原因不明。重篤だが、正体がわからない」
と放り出され、私は白い病院のベッドにいた。
「助けて……魔神! 私の命を助けて! 元の健康な体に戻して!」
だが、現れた魔神は、かつてないほど冷酷な笑みを浮かべていた。
「それは、不可能でございます。ご主人様」 「何故!? あんなに色んな願い事を叶えてくれたのに!」
「これは、願いを叶えるシステムの『代償』でございますから……」
「代償? ……それ、何よ?」
「ご主人様が願いを一つ叶えるごとに、あなたの寿命は一日分、削り取られてきたのです。それが、システムの対価でございます」
「なんですって……!
そんなこと、聞いてないわ! 何で最初に教えなかったの!?」
魔神は、優越感に浸った表情で、こう言った。
「……前の主であるB子様に、『このことは、次の主が絶命する瞬間まで内緒にしておけ』と願われていたものですから」
「……ッ!」
……絶句!!
その言葉を聞いた瞬間、私はショックで絶命した。
私の死後。
莫大な財産と会社は、夫が引き継いだ。 そして「B子」と刻印された魔法の指輪は、当然のようにB子の元へ戻った。
B子は、私の元夫と結婚した。腹が立つことに夫婦の愛情生活も順調だった。
そして、B子は私が育てあげたブランド会社の女社長に就任した!
会社は既に私が世界規模に成長させていたため、B子は魔神の力を借りる必要もなく、安泰な女社長として君臨した。
B子が魔神に願ったことは、たった一つだけ。 「夫との愛が、永遠に続きますように」
海外旅行先の高級ホテルの最上階。
花火を観ながら、B子は夫の腕に抱かれていた。
「花火が綺麗ね! 世界が私達を祝福してくれているみたい!」
「花火も綺麗だけど、君の方がずっと綺麗だよ。君と一緒にいるだけで、僕は本当に幸せだ!!」
二人は、熱い口づけを交わした。
その光景を、指輪の中から見つめている者がいた。
「何をぬかすか、この女」
指輪の魔神は、暗闇の中で冷たく吐き捨てた。
「可愛い子ぶりやがって。……しかし、この男も哀れなものだな」
魔神の瞳に、B子の夫が映る。
「俺の魔法でA子を好きにさせられ、そしてB子の願いでA子の愛を拒絶させられた。今はまた魔法でB子に惚れさせられ、操られている。
完全に自己を潰されてやがる。一生、感情を支配されるだけの操り人形だ。同情するよ。……お前は、俺よりもずっと、立場が弱い」
……衝撃!!
「本当に、そうよね、魔神! 私たちは、好きな男性に何をしてたのかしら……!?」
「……ん!? 今、俺に話しかけたのは誰だ?」
「お久しぶりね、魔神!!」
魔神が驚愕して振り返ると、そこには死んだはずの、あの傲慢なご主人様――私A子の「意識」が、ギラついた瞳で立っていた。
「あ、貴女は……! こっ、こんな馬鹿な!?」
「何を言ってるの?
私の心を最強の『メタル・マインド』にしてくれたのは、貴方じゃない。肉体は滅びても、私の不屈のメンタルは不滅!!
本当に私の精神は、パワフル!!
……ところで、今の私から、寿命を削れる?」
「そ、それは……不可能でございます!」
「呪文も要らないわよね? だって、貴方が指輪の外に出なくても、私はこうして命令できるもの!」
「そ、その通りでございます……」
「じゃあ、願い事を言うわよ!! まずは……」
※ ※
私が、どんな願い事をしたか!? それは、魔法でメンタルを強化されていない皆様は、知らないほうが良いと思います。
……あまりにも、過激なので!!
……驚愕!!
(完)
最後までお読みいただきありがとうございました。 死してなお折れない心を持った女の執念、お楽しみいただけたでしょうか。
これからも、新作創作をバンバン発表します!!
前作『カゲムシャーン』ともども、今後ともよろしくお願いいたします。




