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Mission2「予告状 檻の中の"商品"」

「――私は、商品です」


その言葉が、静かに落ちた。


エスポワールは、わずかに目を細める。


「……そう。ずいぶんと、物騒な自己紹介だね」


イフリートは何も答えない。


ただ、こちらを見ているが、感情のない瞳がエスポワールには気がかりだった。


「……まあいいや」


肩をすくめると、


「無理に聞き出すほど、野暮じゃない」


満月の光が、仮面をかすめた。


イフリートの視線が、ふと腕に落ちる。


「そんなに気になる?ちょっと失敗しちゃって」


イフリートは答えないが、そのままそっと腕に触れた。


「大した傷じゃないよ。すぐに治るさ」


軽く言うが、イフリートは背を向け、引き出しを開けた。


戻ってくると、手には小さな箱が握られていた。


「手当て、してくれるのかい?」


何も言わず、手当てが始まる。


「……慣れてるね」


消毒液が触れると、わずかな痛みがあるが、それよりもその手の方が気になった。


丁寧で、迷いがなく、それでいて、妙に優しい。


「……君は」


ふっと笑う。


「思ってたより、優しいんだね」


イフリートの手が、ほんの一瞬だけ止まる。


「……分かりません」


「そう?」


くすりと笑う。


「自覚がないのが、一番厄介だ」


「……終わりました」


「ありがとう。助かったよ」


イフリートは目を伏せる。


「……菌が入ったら大変ですから」


満月の光が、穏やかな空気に変わった二人を照らしている。


「じゃあね?また縁があれば会えるといいな」


エスポワールが窓へ向かうと、夜風が静かに流れ込む。


そのまま外へ出ようとして、ふと足を止めた。


「……そうだ、お礼をまだしてなかった」


片手を軽く上げ、指先で弾くような仕草をすると、次の瞬間、何もなかったはずの手の中に、一輪の赤い薔薇が現れた。


「……」


イフリートの瞳が、わずかに揺れる。


エスポワールは歩み寄り、そっとその手に握らせた。


「……っ」


今度こそ背を向け、窓を越えて外へ出る。


屋根に戻ると、遠くで屋敷の警備が慌ててこちらに気付いた。


だが、エスポワールは振り返らない。


肩をすくめ、満月を見上げる。


「……不思議な子だった」


そう呟き、夜に姿を溶かした。


イフリートは、しばらく動かなかった。


赤い薔薇だけを握りしめ、窓から月を見上げる。


「怪盗……」


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