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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第1章~そこで暮らす者たち~

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93/206

093、祭りの後

AI作成

広場は、もう静かだった。


 さっきまで人で埋め尽くされていた場所には、提灯の残り火がゆらりと揺れるだけ。

 やぐらの影が長く伸び、夜気がゆっくりと熱を冷ましていく。


 遠くで、最後の太鼓が片付けられる音がした。


「終わったわねえ」


 やぐらの縁に腰掛けた紫妖狐が、空を見上げる。

 九つの尾が、疲れたようにゆるく広がっていた。


「毎年言ってる気がする」


 隣に座るライが笑う。手にはまだ酒瓶。


「だって毎年終わるもの、祭りは」


「始まると早いんだよな」


「楽しい時間ほどね」


 三人目――少し離れて立っていたヒサメが、静かに歩み寄る。


 結界の余韻がまだ彼女の周囲に淡く残っていた。


「町の魔力の流れ、安定しています。今夜はよく眠れそうです」


「おつかれさま、ヒサメ」


 妖狐が柔らかく笑う。


「あなたのおかげで、誰も不安にならずに済んだわ」


「いえ。私はただ、薄く覆っただけです。……皆さんの笑い声の方が、よほど強い結界でした」


 ライが鼻で笑う。


「違いねえな」


 少しの沈黙。


 虫の声が戻ってきている。


 提灯の火が、ぱち、と小さく鳴った。


「……この匂い、好きだわ」


 妖狐が言う。


「酒と、土と、汗と、火薬と。生きてる匂い」


「年寄りくせえこと言ってんな」


「長生きしてるんだから仕方ないでしょ」


 ヒサメは、そのやり取りを静かに聞いていた。


 視線は広場に落ちている。


「……祭りの後って、不思議ですね」


「何がだ?」


「楽しかった分だけ、少し寂しい」


 妖狐の尾が、ゆるりと揺れる。


「余韻ってやつよ」


「滅びた世界には、余韻なんてありませんでした」


 夜風が吹く。


 誰もすぐには言葉を挟まない。


「終わる前に、終わっていましたから」


 ライが酒をひと口飲み、空を見る。


「じゃあ覚えとけ」


「?」


「この寂しさはな、次がある証拠だ」


 ヒサメがゆっくり瞬く。


「また来年があるってことだ」


 妖狐が小さく笑った。


「ええ。だから私はこの夜が好きなの。終わりじゃなくて、“続きの約束”だから」


 遠くの提灯が一つ消える。


 夜が深くなる。


「来年はもっと酒を用意させよう」


「踊りも新しい振り付けを混ぜたいわね」


「……結界、花の形にしてみましょうか」


 二人がヒサメを見る。


「できるの?」


「練習します」


「真面目だなあ」


「いいことよ」


 妖狐は立ち上がる。


 尾が夜風にほどける。


「守りましょう」


 静かな声。


「来年も、この夜を」


 ライも立つ。


「当たり前だ」


 ヒサメが頷く。


「はい」


 三人の影が、提灯の残り火に揺れる。


 広場は静かだった。


 だがそこには確かに、

 来年へ続く約束が残っていた。


祭りが終わった後ってどこか寂しさが残りますよね。でも、それは次へとつながる約束でもある。

このように廻っているんですね、世界は。感慨深い。

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