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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第1章~そこで暮らす者たち~

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089、狐火和国のお狐様たち

AI作成。

東の平野部に広がる城下町は、朝から賑やかだった。


「ヒサメちゃーん! うちの畑にもお願いできるかい?」


 野菜籠を抱えた老婆が、通りを歩く一人の女性に手を振る。

 白を基調にした衣に、幾何学模様の符がいくつも差し込まれた帯。

涼やかな目元の魔族の女性、ヒサメは足を止め、柔らかく微笑んだ。


「はい。昨日お渡しした符の隣に、これを追加してください。今夜少し冷えますから」


 差し出された小さな符が、かすかに淡い光を帯びる。


「まぁまぁ、助かるよぉ。これ持っていきな」


 渡されたのは瑞々しい大根。ヒサメは少し戸惑いながらも、ぺこりと頭を下げた。


「ありがとうございます」


 こうして彼女は、国のあちこちを回っては結界の補強、作物の加護、家屋の防護を施している。

派手さはないが、この国の日常を静かに支える仕事だった。


 その背後、屋台の上から妙な掛け声が響いた。


「ニンニン!! 本日限定、忍法みたらし団子の術!!」


 くの字ポーズで串団子を掲げているのは、黒装束の魔族の女性。カナミである。


「それ忍者関係ありますか」


「あるニン! 忍者は甘味に目がないでござる!」


 ヒサメは小さくため息をつき、歩き去った。


 西の山林区画、石段の上。

 鳥居をくぐった先の神社は、昼下がりの陽光に包まれていた。


 縁側に寝転ぶ一人の女性。艶やかな黒髪、白い肌、そして背後に揺れる九本の狐の尾。


 紫妖狐は徳利を傾け、満足そうに息をついた。


「やはり昼の酒は格別じゃのう」


「神が言う台詞じゃないなそれは」


 隣で豪快に杯を空けるのは、角を持つ鬼の女、ライ。赤い瞳が楽しげに細められる。


「国、平和すぎないか?」


「よいことじゃろ。仕事がないのが一番じゃ」


「それ言えるの管理者側だけな」


 二人は笑う。山の風が尾を揺らし、木々を鳴らす。


「失礼します」


 石段を上がってきたヒサメが一礼する。


「結界、異常ありません。作物の加護も順調です。ゆがみも安定しています」


「うむ、ご苦労」


 妖狐は目を細めた。


「一杯飲んでいかぬか?」


「昼間です」


「真面目か」


 ライが肩を揺らして笑う。


 そのとき。


 ドサッ!!


 屋根から黒い影が落ちてきた。


「ニンニン失敗!!」


「カナミ、なにをしておる」


「任務でござるよ! 町の歌舞伎座の稽古を偵察してきたニン!」


「またか」


 カナミは懐から絵刷りを取り出す。


「今回の演目、“九尾様、裂け目から龍を素手で引きずり出すの巻”!!」


「やってない」


「雷神と合体して天空を裂く必殺技もあるニン」


「それもやってない」


 妖狐は杯を口に運び、ぽつり。


「空は……飛べなくもないがのう」


「やるんかい」


 ライが吹き出した。


「それより見てくださいニン!」


 今度は浮世絵。


 涼しげな女性が雨の中に佇む美人画。


「氷雨の新作、また大売れニン!」


 妖狐の尾がぴたりと止まる。


「……わらわより売れておるのか?」


「三倍くらい」


 ライ、爆笑。


 ヒサメ、困惑。


 やがて夕方。三人は山を下りていった。


 縁側には、妖狐とライだけが残る。


 静かな風。


「……平和だな」


「うむ」


 妖狐の視線が、一瞬だけ社殿の奥へ向く。

 誰も知らないその場所に、静かに揺らぐ時空のゆがみがある。


 だが彼女は何も言わず、杯を傾けた。


 山の上には、今日も変わらぬ夕焼けが広がっていた。


今回は和の国、「狐火和国」のお話です。お狐様と鬼様を崇める多種族国家です。

ヒサメはお狐様の弟子として生活を支えています。

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