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085、はるか昔の言霊
AI作成
原始の森。朝の光が毛皮の集落を淡く照らす。
小さな少女は丸く縮こまり、地面に刻まれた溝を指でなぞる。
その手から、淡い光の粒がぽつりぽつりと舞い上がる。
魔族の力――まだ制御されぬ魔術が、彼女の意識の波に応えて震えている。
「……ポン?」
声にならない声が、初めて音になった。
それは森の静寂に溶け込み、野生動物たちも立ち止まる。
部族の大人たちは目を丸くし、子供たちはただじっと見つめる。
シャーはもう一度、同じ音を口に出す。
「ポン……ポンガ……ガ……ンガ……」
音が揺れるたび、地面の溝の光が変化し、文字の形のようにうねる。
まだ完璧ではない、でも確かに「意味」と「形」が生まれた瞬間だった。
そしてシャーは自分の胸を指さし、口を尖らせて宣言する。
「シャー!」
その音は小さくとも、集落全体に響いた。
魔術と音、意思がひとつになり、部族の中に新しい秩序の種が落とされた。
これが、後に文字と文の始まりとなる、最初の記録であった。
これは、魔術学術国家「ウォル」の昔話。記述に残る最古の話。
始めて言葉が生まれた日の出来事の記録である。




