075、月明かりの下で
AI制作
夜が来る。
荒野の夜は冷える。
昼の熱を奪い、音を減らし、
世界を静かなものへ戻していく。
だが今夜は違った。
風は吹いている。
砂も流れている。
それでも。
砂の屋敷の中だけは、
静けさが“優しい”。
ピーゼンが小さく漂いながら言う。
「音が、丸いです」
ラジリーは床にぺたんと座る。
「ここ、なんか落ち着く〜」
トスクは壁に背を預ける。
「形は、心に影響を与えるものですね」
コーエンは入り口近くに立ち、外の風を見ている。
風は通る。だが荒れない。
サキは皆の間を行き来していた。
「寒くないですか? ここ、少し冷えますね」
自分が一番細い体なのに、誰よりも気にしている。
ヘルガイトは屋敷の中央に座る。
何も言わない。
だがその場から動かないのが、彼なりの“留まる”という選択だった。
しばらくして。
ラジリーが横になる。
「……あたし、ここ好き」
ピーゼンも少し高度を下げる。
「落ち着きます」
トスクは目を閉じる。
コーエンは壁に触れ、静かに佇む。
サキは、少し離れた場所に座って皆を見る。
眠っているか、まどろんでいるか、
その境目の時間。
彼女は胸に手を当て、小さく息を吸う。
「……あの」
声は遠慮がち。
「みなさんが、ここにいてくれて……よかったです」
返事はない。
だが空気が、柔らかくなる。
サキは小さく笑う。
八重歯が少しのぞく。
そして、ゆっくり言う。
「……おやすみなさい」
その声は屋根に当たり、
優しく戻ってきた。
荒野の外では風が鳴いている。
だがここでは違う。
ここには“留まる時間”がある。
ヘルガイトは目を閉じたまま、低く呟く。
「……悪くない夜だ」
それは誰にも向けられていない言葉。
だが、屋敷はそれを受け止める。
荒野に初めて生まれた、
“屋根の下の夜”。
それは静かで、
そして確かに――
帰る場所の夜だった。
かつては散らばっていたものたち。でも、今は感じる、整っていると。
荒野を照らす一筋の灯りが、今夜も穏やかでいられますように。




