074、おかえりとただいま
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荒野の風は、いつも通りだった。
止まらず、留まらず、
削り、運び、形を消していく。
その中を、六つの影が歩いている。
ヘルガイト。
ラジリー。
ピーゼン。
トスク。
サキ。
そして、コーエン。
仲間は増えた。
だが、足を止める場所はまだない。
そのときだった。
サキが、ぽつりとこぼす。
「……みんなで、帰る場所があったらいいですね」
足音が一瞬だけ減る。
ラジリーが振り向く。
「え?」
サキは少し慌てる。
「い、いえ、あの……疲れたときに、ちゃんと休めるところが……」
ピーゼンが小さく頷く。
「“戻る”って、いい言葉です」
トスクは空を見上げる。
「根を持たぬ者が、根を求める。自然なことです」
コーエンは、ただ穏やかに聞いている。
ヘルガイトは周囲を見渡す。
何もない。
だからこそ。
「ならば作るか」
静かだが、決定の声。
ラジリーの目が輝く。
「え、建物!?」
ピーゼンが少し浮く。
「空間を作る、ですね」
サキは胸の前で手を握る。
「……いいんですか?」
「構わん」
ヘルガイトは地面に手をついた。
黒い霧が広がる。
荒野の砂が、音もなく震えた。
「形を保て」
その一言で、砂が締まる。
崩れない“概念”を与えられた粒子が、土台になる。
ラジリーが飛び込む。
「任せて!」
粘液が砂の表面を撫で、壁が滑らかに整えられる。
ピーゼンが低く漂う。
「ここ、空洞にします」
ガスが内部の砂を押しのけ、空間が生まれる。
トスクは朽ちた木片を拾い、静かに埋め込む。
「形は、命の名残で支えましょう」
サキは皆のそばを回る。
「手、怪我してませんか? 水分、足りてますか?」
誰よりも忙しい。
そして――
コーエンは、ただ立っている。
風が彼女の髪を揺らす。
だが不思議なことに、
作られた形は崩れない。
彼女がいるだけで、砂は“留まる”。
やがて、夕日が傾くころ。
荒野に、丸みを帯びた砂の屋敷が立っていた。
角のない壁。
低く広がる形。
風に逆らわず、それでも流されない存在。
サキが、そっと呟く。
「……帰る場所、できましたね」
誰もすぐには答えない。
コーエンが壁に手を当てる。
「風は通ります。ですが、ここは流されません」
その言葉で、この場所の意味が定まる。
ピーゼンが中をのぞく。
「音が、優しいです」
ラジリーはその場でくるっと回る。
「ここ、好き!」
トスクは静かに頷く。
「安らぎは、形にも宿る」
ヘルガイトは屋敷を見上げる。
荒野の中で、そこだけが
“続くもの”として立っている。
「悪くない」
短い評価。
サキが、少しだけ前に出る。
扉の前。
胸に手を当てて、照れくさそうに。
「……ただいま」
風が、やわらぐ。
ラジリーが笑う。
「じゃああたし言う! おかえり!」
ピーゼンが微笑む。
トスクが目を細める。
コーエンは静かに見守る。
ヘルガイトは何も言わない。
だが、その場を離れなかった。
荒野で初めて。
“帰る”と“迎える”が生まれた。
それは建物ではない。
存在たちの、居場所の始まりだった。
帰るべき場所があると、安心感が違いますよね。
ただいまと言い、おかえりと迎える。それがとても尊いのです。




