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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第1章~そこで暮らす者たち~

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22/206

022、守る場所ができた日

AI制作

朝の光は、もう「知らない土地」を照らしてはいなかった。


それは帰る場所を持った光だった。


潮騒が、規則正しく砂浜を撫でる。

海沿いに並ぶ六棟の家屋は、かつての粗末な小屋ではなく、風向きと日差しを計算して建てられた“住まい”へと変わっている。少し離れた場所には、寄り合い所。木材を組み上げた骨組みに、干した網と道具が整然と並ぶ。


この土地は、もう拠点ではない。

村だった。


「潮の引き、早いな」


橘秀一は海面を見つめ、棒の先で砂に線を引いた。

波の位置、潮の高さ、昨日との違い。彼の頭の中には、見えない地図が広がっている。


「今日の午後、沖に出るならこの時間帯が安全だよ」


まだ十九だが、その言葉に年長の漁師たちがうなずく。

測量は彼の領分だった。


寄り合い所の裏手では、煙が静かに上がっている。


「干し魚、今日で三日目。いい具合だね」


月代仁香が木枠に並ぶ魚を確認する。

塩、風、日差し。保存の技術は、彼女の手で“食料”を“備え”へと変えた。


「仁香姉ー! お腹すいたー!」


走ってくるのは金田時雨と橘朱里。

砂だらけ、笑顔全開。


「朝ごはん食べたでしょ」


「それは朝の分!」


「今は遊びの分!」


朱里のほうが一枚上手だ。仁香は吹き出しながら小さな木の実を渡す。


その少し奥、木材の束の前。


神楽次郎は板を地面に並べ、炭で線を引いていた。

彼の描く線はただの印ではない。


「ここを少し高くする。雨水はこっちに流す」


設計図だった。


「また村を変える気か」


背後から声。桂源三郎。


「守るための形にするだけだよ」


源三郎は笑い、木剣を肩に担ぐ。

彼は今日も巡回だ。歪みが現れやすい海岸線の確認。

村には、守る者がいる。


家の前では、橘花子が布を干していた。

遠くで神楽美恵子の泣き声が聞こえる。


泣き声がある。

洗濯がある。

設計がある。

保存食がある。

測量がある。

見回りがある。


戦うためではない。


暮らすための営みが、ここにあった。


昼前。

海から戻った敬三が、舟を砂浜に引き上げる。


視線の先に、村がある。


かつては「生き延びる場所」だった。

今は違う。


「帰るか」


その一言に、すべてが詰まっていた。


ここは拠点ではない。

通過点でもない。


守る場所になったのだ。


そしてその日、誰もが無意識に理解した。


この場所を失う未来は、もう選べない。


だから彼らは、今日も働く。

笑い、食べ、作り、見守る。


戦いはまだ遠い。

だが“守る理由”は、もう生まれていた。


時は経ち、次世代の子の登場である。彼らはこの村を大きく変えていく。

集まりから村へと発展した。今は守る場所。

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