022、守る場所ができた日
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朝の光は、もう「知らない土地」を照らしてはいなかった。
それは帰る場所を持った光だった。
潮騒が、規則正しく砂浜を撫でる。
海沿いに並ぶ六棟の家屋は、かつての粗末な小屋ではなく、風向きと日差しを計算して建てられた“住まい”へと変わっている。少し離れた場所には、寄り合い所。木材を組み上げた骨組みに、干した網と道具が整然と並ぶ。
この土地は、もう拠点ではない。
村だった。
「潮の引き、早いな」
橘秀一は海面を見つめ、棒の先で砂に線を引いた。
波の位置、潮の高さ、昨日との違い。彼の頭の中には、見えない地図が広がっている。
「今日の午後、沖に出るならこの時間帯が安全だよ」
まだ十九だが、その言葉に年長の漁師たちがうなずく。
測量は彼の領分だった。
寄り合い所の裏手では、煙が静かに上がっている。
「干し魚、今日で三日目。いい具合だね」
月代仁香が木枠に並ぶ魚を確認する。
塩、風、日差し。保存の技術は、彼女の手で“食料”を“備え”へと変えた。
「仁香姉ー! お腹すいたー!」
走ってくるのは金田時雨と橘朱里。
砂だらけ、笑顔全開。
「朝ごはん食べたでしょ」
「それは朝の分!」
「今は遊びの分!」
朱里のほうが一枚上手だ。仁香は吹き出しながら小さな木の実を渡す。
その少し奥、木材の束の前。
神楽次郎は板を地面に並べ、炭で線を引いていた。
彼の描く線はただの印ではない。
「ここを少し高くする。雨水はこっちに流す」
設計図だった。
「また村を変える気か」
背後から声。桂源三郎。
「守るための形にするだけだよ」
源三郎は笑い、木剣を肩に担ぐ。
彼は今日も巡回だ。歪みが現れやすい海岸線の確認。
村には、守る者がいる。
家の前では、橘花子が布を干していた。
遠くで神楽美恵子の泣き声が聞こえる。
泣き声がある。
洗濯がある。
設計がある。
保存食がある。
測量がある。
見回りがある。
戦うためではない。
暮らすための営みが、ここにあった。
昼前。
海から戻った敬三が、舟を砂浜に引き上げる。
視線の先に、村がある。
かつては「生き延びる場所」だった。
今は違う。
「帰るか」
その一言に、すべてが詰まっていた。
ここは拠点ではない。
通過点でもない。
守る場所になったのだ。
そしてその日、誰もが無意識に理解した。
この場所を失う未来は、もう選べない。
だから彼らは、今日も働く。
笑い、食べ、作り、見守る。
戦いはまだ遠い。
だが“守る理由”は、もう生まれていた。
時は経ち、次世代の子の登場である。彼らはこの村を大きく変えていく。
集まりから村へと発展した。今は守る場所。




