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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第3章~若き天才たちと支える者~

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204/206

204、裏表

AI作成

雪は静かだった。


降っているのか、舞っているのかも分からないほど、

世界は白く、音を吸い込んでいた。


スキアとサンは、山道を踏みしめながら進む。


「……本当にここで合っているのですか?」


サンが地図を確認しながら問う。


「ディアーは“雪山の麓の小屋”と言っていた。ならばここだ」


スキアの視線は揺れない。

だが、その足取りはわずかに早い。


絵本の一節が、頭から離れなかった。


雪山遭難しちゃったよ。

うつらうつら夢を見るよ。


あの言葉は、比喩ではない。


確信があった。


やがて、小さな木造の小屋が見えてくる。


煙突からは、かすかに煙。


「……いますね」


スキアは扉の前に立つ。

一拍、呼吸を整え――叩いた。


コン、コン。


返事はない。


もう一度。


コン、コン。


内側から、軋む音。


ゆっくりと扉が開いた。


現れたのは、白に近い銀髪の青年だった。


眠そうな目。

だが、瞳の奥は異様に澄んでいる。


「……誰」


声は平坦。


「あなたが愛染吹雪か」


スキアが絵本を取り出す。


青年の視線が、ぴたりと止まる。


表紙を見た瞬間、わずかに眉が動いた。


「……ああ、それ。売れ残り」


「これを書いたのはあなたか」


「そうだけど」


沈黙。


雪の音だけがある。


スキアは本を開く。


「この“裂け目”の描写。実体験だな?」


吹雪の視線が、初めてスキアをまっすぐ射抜いた。


「……なんで、そう思うの」


「想像では、ここまで具体的にならない」


サンが息をのむ。


吹雪は数秒、何も言わなかった。


やがて、ぽつりと。


「雪山で遭難したこと、ある?」


「ない」


「あるとね」


吹雪は、空を見るように目を細める。


「世界が壊れるんだよ」


沈黙。


「音が遠くなって、光が割れて、

 今いる場所と、別の場所が重なる」


スキアの喉が、わずかに動く。


「裂け目を見たのか」


「見た、というより」


吹雪は笑った。


乾いた、温度のない笑み。


「落ちた」


サンの手が震える。


「戻ってきたのですか?」


「戻ってきたのが“こっち”かは、分からないけどね」


その言葉に、空気が変わる。


スキアは一歩、踏み出す。


「詳細を聞かせてほしい」


吹雪は、少しだけ首を傾げる。


「……なんで」


「世界を修復するためだ」


一瞬。


吹雪の目が、わずかに揺れた。


「修復?」


その言葉は、彼の中で何かに触れた。


「壊れた世界を?」


「そうだ」


静寂。


雪が、音もなく積もる。


吹雪はゆっくりと扉を開ききった。


「……寒いから、入れば」


その声は、さっきよりもわずかに人間的だった。


スキアは小屋の中へ踏み込む。


サンも続く。


扉が閉まる。


外の世界は、白に溶けた。

コインの裏と表。でもどっちが裏? どっちが表?

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