020、ここに住むと決めた日
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魚の匂いが、まだ浜に残っている。
腹が満たされたことで、空気が少し変わった。
不安は消えていない。だが、動く余裕ができた。
神楽一番が丘を見上げる。
「住むなら、あのあたりだな」
海から少し離れた場所。
緩やかな斜面。風は弱く、見晴らしもいい。
敬三が頷く。
「波が来ても届かない位置だ。だが海は見える」
それが条件だった。
大工組が動き出す。
桂弘信が流木を担ぎ、
博多希子が枝を選び、
諫早希が地面を踏み固める。
「屋根は低く作る」神楽が言う。
「まずは雨と風を防ぐだけでいい」
家ではない。
“身を隠す殻”。
石川拓斗が太い枝を運びながら息を切らす。
「これ…文明ってやつか?」
丑三が笑う。
「文明ってのはな、たぶんこういう“めんどくせえこと”の積み重ねだ」
誰かが吹き出す。
疲れているのに、手は止まらない。
月代萬月は少し離れた場所に立ち、周囲を警戒している。
戦える者は、作業に入らない。
この分担が、自然にできている。
敬三は地面に杭を打ち込みながら言う。
「ここは通り道じゃない。
だが“俺たちが通る場所”にする」
神楽一番が横で頷く。
「人が踏めば道になる」
言葉は違う。意味は同じ。
日が傾く頃、形ができる。
枝を組み、葉を重ねただけの粗末なもの。
だが、風が直接当たらない空間がある。
博多が中に入り、空を見上げる。
「……落ち着く」
それが答えだった。
花子がその隣に座る。
明美が壁の隙間を埋める。
誰かが言う。
「屋根があるって、すげえな…」
その感覚は、全員同じだった。
敬三は少し離れてそれを見る。
まだ仮だ。
崩れるかもしれない。
それでも。
昨日は地面だった場所に、
今日は“中”がある。
外と内が分かれた。
それが、文明だった。
風が吹く。
だがもう、直には当たらない。
十二人の世界は、火の円から、
屋根のある空間へと広がった。
ここはまだ家ではない。
だが確かに――
人の居場所が、生まれた。
今度は初めての住居を作った話です。
彼らはここを永住の地と決め、生きていくことを選択しました。




