表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第1章~そこで暮らす者たち~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/206

019、海の恵み、海の警告

AI制作

朝日が完全に昇る頃、海は穏やかな顔をしていた。


だが敬三は騙されない。


「道具がねえ漁は、漁じゃねえ。拾いもんだ」


そう言いながらも、もう浜を歩いている。


花子、恭一、丑三、萬月、君島、一重、明美。

漁師組が自然と集まる。


「網は無理だな」

「針もねえ」

「手掴みか、追い込みか…」


現実は厳しい。


そのとき明美がしゃがみ込んだ。


「これ見て」


波打ち際の岩場。

浅い潮だまりに、小さな影が動く。


魚だ。


指ほどの細い魚が、閉じ込められている。


「潮が引いて取り残されたか」


敬三の目が鋭くなる。


「素手でいける。だが滑るぞ」


萬月が剣を抜く代わりに、腰を落とした。

戦士の動きではない。獲物を狩る動きだ。


恭一と拓斗が両側から囲む。


「せーの!」


水が跳ねる。


一匹逃げる。

二匹逃げる。


だが花子の手が、水中から跳ね上がった。


ぴちぴちと暴れる魚。


「取った!」


空気が一気に変わる。


その後は早かった。


笑い声が混じる。

転ぶ音。

水しぶき。


大漁とは言えない。

だが十数匹の小魚が浜に並ぶ。


敬三はそれを見て、静かに頷いた。


「……食えるな」


その一言の重み。


生き延びる可能性が、数字じゃなく形になった瞬間。


だが、海はそれだけでは終わらなかった。


沖合で、急に水面がざわつく。


敬三の顔が変わる。


「離れろ!!」


全員が反射で下がる。


次の瞬間、波が強く打ち寄せる。

さっきまで立っていた岩場を水が飲み込む。


萬月が息を吐く。


「……急に来たな」


「これが海だ」


敬三の声は低い。


「取らせる時は取らせる。だが、取りすぎるなって時は、必ず来る」


教訓ではない。経験だ。


誰も軽口を叩かない。


だが浜には魚がある。

事実が、希望になる。


丑三が笑う。


「焼けるな」


その言葉に、全員の腹が鳴った。


敬三は海を見る。


敵でも味方でもない。


だが今日、彼らは一つ学んだ。


この世界には“生きる余地”がある。


それは祝福ではない。

試験の続きだ。


だが、確かに――


人は、最初の糧を得た。


初めての漁は、いわゆる目立つ作業でもなく、打ちあがった魚を取る話。

そして、海のやさしさ、怖さが描かれています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ