017、初めての夜、初めての光
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太陽は、思っていたより早く傾いた。
気づけば、影が長く伸びている。
海は昼よりも黒く、深く見えた。
「戻れー!!」
丘の方から声が飛ぶ。荒波恭一だ。
水探し班が戻ってくる。
息は上がっているが、表情は悪くない。
「細い流れがあった!ちょっと上だ!飲めると思う!」
空気が少しだけ軽くなる。
敬三は頷く。
「よくやった」
短い言葉だが、本物の労いだった。
浜では、流木が集められていた。
神楽一番と桂弘信が石を打ち合わせている。
カン、カン、と乾いた音。
「火、起こせそうか」
敬三の問いに、桂が歯を見せる。
「やるしかねえだろ」
火花が散る。
だが、なかなか育たない。
風が強い。
博多希子と諫早希が体で風を遮り、
三雲……いや、違う世界だ――博多が小枝を差し出す。
何度目かの火花のあと。
ふ、と小さな橙色が生まれた。
「……!」
全員が息を止める。
火は揺れ、消えそうになり、
そして小枝を舐め、広がった。
炎が立つ。
その瞬間。
誰かが、小さく笑った。
誰かが、深く息を吐いた。
文明の最初の光だった。
夜が来る。
空は群青に沈み、星が現れる。
見たことのない星の並び。
波音が、昼より大きく聞こえる。
火の周りに十二人が集まる。
火の外は闇だ。
闇は深い。
丘の向こうも、海の先も、何も見えない。
「……広すぎるな」
丑三の呟き。
誰も否定しない。
世界は広い。
自分たちは、あまりに小さい。
敬三は火を見る。
炎は、生き物みたいに揺れている。
「夜は交代で見る」
その声で、全員の視線が上がる。
「俺と萬月が最初だ。次は神楽、桂。
火を絶やすな。海から目を離すな」
命令ではない。
生きるための共有。
花子が、そっと敬三の隣に座る。
肩が触れる。
それだけで、敬三の呼吸が少しだけ深くなる。
遠くで、波が砕ける音。
誰かの腹が鳴る音。
木が爆ぜる音。
誰もまだ、この場所を“家”とは呼ばない。
だが確かに、十二人は同じ円の内側にいた。
闇の世界で、火だけが境界線。
人の世界と、自然の世界を分ける、最初の線。
そして夜は、静かに、長く続いていく。
文明はまだ、火のひとつ分の大きさしかなかった。
最初の夜は、火が初めて灯った日。静かな一歩。でも、大事な一歩。
今後、彼らは少しずつ成長し歩み始める。




