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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第2章~旅人チェルシー~

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164/206

164、つぼみ

AI作成、セリフ筆者

最初に呼吸を整えたのは、ヒサメだった。


ゆっくりと息を吐き、乱れたマナの余波を確認する。


「……まさか、本当にできるとは思わなかったわ」


その声には、わずかな驚きと、確かな評価が混じっている。


チェルシーは自分の手を見る。


震えている。


「私が……裂け目を、修復した……」


事実が、遅れて実感になる。


横で刀を納めた月詠が、静かに笑った。


「こんな大変な作業を、いつも淡々とこなしていたのか。お狐様と雷神様は」


「そうね」


ヒサメは頷く。


「実際に現場に立つと、その威圧感は段違いだった」


空間そのものが敵意を持つ感覚。

あれを“いつも”相手にしている存在。


チェルシーはヒサメを見る。


「ヒサメ、ありがとう。君がいなければ、私は口だけの者になっていた」


「何を言ってるの?」


即答だった。


「あなたがいなかったら、そもそも自力でやろうなんて思わないわよ」


その言葉に、わずかに空気が和らぐ。


月詠が肩を揺らした。


「フフフ。チェルシー殿。すっかりヒサメ殿と意気投合しておられるな」


「え、あ……って、ちょっと待って。どうして私の名を?」


「月詠の情報網を甘く見ないことね」


ヒサメがさらりと言う。


「探求心だけなら、きっとあなたより上よ」


月詠は悪びれもせず頷いた。


「お狐様が何をしているのか興味があってな。調べ始めたら、なんと国の成り立ちに関わるではないか。これを興味持つなと言う方が無理ですぞ」


チェルシーの目が鋭くなる。


「月詠は、どこまで知ってるの?」


「私が知っているのは、修復師と呼ばれる存在と、それを守る縫界衛士の存在までだ。それ以上は知らぬ」


ヒサメが小さく笑う。


「ね? 十分すぎる情報でしょ?」


沈黙。


夕暮れの風が、わずかに吹き抜ける。


月詠は踵を返した。


「さてと、私はそろそろ自警団のもとへ帰るとするか」


「その必要はないぞ」


低く、よく通る声。


三人が同時に振り向く。


そこに立っていたのは――


長い紫の髪を風に揺らす女。


その隣には、腕を組んだ雷の気配を纏う女。


「……お狐様」


月詠が膝をつき、頭を垂れる。


ヒサメも静かに姿勢を正す。


チェルシーだけが、目を細めた。


目の前の存在から放たれるのは、圧倒的な静寂。


暴威ではない。

威圧でもない。


“世界を知る者”の気配。


紫妖狐は、ゆるりと微笑んだ。


「よくやったのう。二人とも」


視線が、チェルシーへ移る。


「……旅人よ」


その一言で、空気が変わる。


「名は、チェルシーと言うたか?」


チェルシーは、ゆっくりと頷いた。


「そうだ」


妖狐は目を細める。


「面白い糸を持っておる」


その言葉に、ヒサメの視線がわずかに揺れる。


ライが鼻で笑った。


「つぼみ、なかなか筋がいいじゃないか」


チェルシーは問い返す。


「あなたは……」


月詠が静かに告げる。


「狐火和国の守護者。九尾の紫妖狐様」


沈黙。


風が止む。


妖狐は、穏やかに言った。


「話をしようかの。社へ来るがよい」


その誘いは、命令ではない。


だが、断れる種類のものでもなかった。


夕日が沈む。


和国の夜が、静かに幕を開ける。


言葉はいらない。ただ前へ進もう。

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