163、裏から見る観察者
AI作成、セリフ筆者
時を同じくして。
狐火和国・西の山林地帯。
深い緑に囲まれた社の縁側に、ひとりの女が腰を下ろしていた。
薄紫の髪が風に揺れる。
閉じられた瞳の奥で、何かを“見て”いる。
紫妖狐は、ゆっくりと目を細めた。
「……かような試練、乗り越えられるか。はたまた崩れ去るか」
唇の端がわずかに上がる。
「安心しぃ。危なくなったら私が行くからの」
隣で腕を組んで立つ女が、鼻を鳴らした。
鋭い眼光。
肩までの黒髪。
雷を思わせる気配を纏う、姉御肌の女――ライ。
「しかし、思い切ったな。あのチェルシーとか言う旅人は、そんなにすごいのか?」
妖狐は空を見上げる。
西日に照らされた雲が、淡く染まっている。
「今はまだ、つぼみやねえ」
静かな声。
「でもな。ヒサメという糧を得て、花が咲くやもしれぬ」
「ヒサメも、免許皆伝かい?」
「いんや」
くすりと笑う。
「まだまだ二人とも未熟じゃのう。私らで鍛えないとな」
ふと、妖狐の目が遠くを射抜く。
「あと、探求心のみでこちら側へと来た自警団長。彼も今後役割を変えないといかんかもね」
ライが眉を上げる。
「自警団はどうする? 団長が抜けると士気に関わるぞ」
「エンジがおる。それに……もう一人、有望そうなのが入りそうじゃ」
妖狐の視線が、ほんの一瞬だけ未来を覗く。
「自警団は心配いらなさそうだ」
「なるほどな」
そのとき。
山を越えて、微かなマナの振動が届いた。
ライがにやりと笑う。
「お、上手く修復したみたいだ」
妖狐は目を閉じる。
「今は二人で一つの花じゃが」
静かに息を吐く。
「いずれ、二つの花へと変わるだろうな」
「そうなったら、いよいよ私たちは隠居か?」
「毎日酒を飲むだけで良い日々が来たら、それはそれで面白そうじゃのう」
少し悪戯っぽく笑う。
「酒の相手も、肴もあるしの」
ライが豪快に笑った。
「違いない」
社の鈴が、風に鳴る。
山林は静かだ。
だが、その静寂の奥で――
世界の根幹に触れる者たちが、確かに動き始めていた。
多くは語らない。ただ、彼女らは眺める。




