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ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第2章~旅人チェルシー~

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160/206

160、豊穣の神?ヒサメ

AI作成、セリフ一部筆者

北部の農村地帯。畑の間を歩く人々の笑顔を横目に、ヒサメはいつものように護符を配り終えた。


「はい、これで最後ね。たくさん収穫できると良いですね」


「ありがとうございます、ヒサメ様!」

「いつもいつもありがとうね」


民の感謝を軽く受け流すように微笑みながらも、ヒサメの瞳は微かに鋭く光る。

(――あそこに旅人が向かっている)

人々には気づかれぬその直感。ヒサメは静かに、その存在を受け止めた。


「……さて。そこの人形師さん」


突然の呼びかけに、チェルシーは反射的に身構える。

声の主は、遠くから見ていたにも関わらず、なぜ自分の正体を見抜いたのか――その感覚に、思わず警戒心が走る。


「あなたは、どちら?」


チェルシーは首をかしげた。

「?」


ヒサメは静かに、しかし確かな意思を持って言葉を紡ぐ。

「未知を既知に変えるのもいいけど、安寧を壊すようなら、その時は容赦しないわ」


チェルシーは落ち着いて返す。

「分かった。善処しよう」


ヒサメの瞳が一瞬だけ鋭く光った。

「私はヒサメ。あなたが簒奪者でないことを祈るわ」


そう言うと、ヒサメは手にした護符にマナを流し、風に溶けるようにその場から姿を消した。


チェルシーは立ち尽くし、思わず呟く。

「もしかして…時空のゆがみのことを言っているのか? ヒサメはいったい何者なんだ…」


背負い人形の重みを感じながら、胸の奥で新たな謎が静かに芽吹く――狐火和国での冒険は、早くもその第一歩を踏み出したのだった。


北部の農村地帯。果樹園の間を歩くチェルシーの目に、老夫婦が手入れをする木々が映った。


「こんにちは」

「おや、こんにちは」

「こんにちは」


果樹を見渡しながら、チェルシーは感嘆する。

「きれいな果樹園ですね」


老父はにっこり笑い、老婆も微笑む。

「そうだろう。これもすべてヒサメ様のおかげじゃ」

「ヒサメ様の?」


老婆が誇らしげに答える。

「ああそうさ。彼女がくれる護符には豊穣の神が宿っているのか、貼るとたちまち果樹が元気に育つのじゃよ」


老父が続ける。

「おかげでこの国ではここ数十年、不作になったことが無いのだよ」


「貴重なお話、ありがとうございます」

「いえいえ」


チェルシーは礼を告げ、再び歩き出す。次に出会ったのは、田園地帯でトラクターを動かす若い農夫だった。


「こんにちは」

「こんにちは! 旅人さんかい?」


チェルシーが機械を見つめる。

「はい。この機械は?」


農夫は誇らしげに説明する。

「ヒサメ様が別の国から買い入れたという最新の農具さ! 今まで手作業で耕してた土をものすごい速さで耕せるんだ! これが来てから趣味の歌舞伎鑑賞もできるようになったんだ!」


「すごいですね」


「しかもこれだけじゃないぞ。自動で田植えしてくれる農具や、自動で収穫する農具も買ってくれたんだ! ヒサメ様はこうも言っていたぞ。『先行投資が大事なんです』とね」


「ありがとうございます。とても参考になりました」


農夫はさらに誘う。

「良ければ、この後一緒に歌舞伎を見に行かないかい? 新演目『豊穣の神ヒサメ様』をやるんだ」


「いえ、またの機会にお願いしますね」

「そうか。興味が出たら見に行くといいよ! 歌舞伎座は大きいからすぐにわかるよ」

「ありがとうございます」


チェルシーは歩きながら考えた。

(ヒサメは農民たちにとても慕われていて、豊穣の神と呼ばれるくらいだということ。それと同じ人物が、私に警告をしたのね…)


この国は不思議なことが一杯だ。警告を意識しつつも、未知への興味は尽きない。


ヒサメさんは常にこの国を思い行動しています。その一端がいろんな形で芽を出します。

かたや豊穣の護符を、かたや最新の農具を。その行動力と東洋魔術の練度、そして資金力は圧巻です。

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