表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスティア群像劇~第1章~  作者: niseimo38
第1章~そこで暮らす者たち~
16/107

016、0からのスタート

AI制作

波音は絶えず続いている。


それだけが、この世界が本物だと証明していた。


敬三はゆっくり立ち上がる。

膝がわずかに震えたのは、寒さか、それとも別のものか。


「……全員、動けるか」


声は大きくない。だが通る。


「なんとか……」

「足は平気だ」

「頭も割れてねえ」


返事がぽつぽつ返る。

欠けている声はない。十二人、いる。


敬三は海ではなく、今度は陸を見る。


「まず、水だ」


短い言葉。だが最優先事項。


花子がすぐに動いた。

「明美、千紗――あ、違うな、島根さん。君島さんも。水探し、いける?」


島根明美は頷き、地面にしゃがみ込む。

指で土をこすり、匂いを嗅ぐ。


「塩気は強くない……地下水、あるかも」


君島一重は丘の方を見た。

「高いとこ行けば流れ見えるかもしれない」


「俺も行く」

荒波恭一が立ち上がる。


敬三は止めない。ただ一言だけ。


「無理はするな。戻れなくなったら終わりだ」


三人は頷き、丘へ向かった。


「食い物は」


今度は神楽一番が口を開く。


敬三と視線が合う。

海の男と、陸の男。


「海だな」敬三が言う。

「だが道具がない」


全員の視線が自分の手元に落ちる。

何も持っていない。


そのとき、丑三がぽつりと呟いた。


「……あの歪みから、物も出るって話、あったよな」


全員が、先ほど空が揺れた場所を見る。


静かだ。だが、何かが起きそうな気配が、そこにある。


「賭けるか?」萬月が言う。


敬三は首を振った。


「最後だ。まずは拾えるもんでどうにかする」


視線が砂浜へ向く。


貝殻、流木、打ち上げられた海藻。


文明ゼロからのスタート。


「夜はどうする」


博多希子が言った。


全員が空を見る。

太陽は高いが、時間は止まらない。


神楽一番が砂浜から少し離れた場所を指さす。


「丘の手前、風が弱い。簡易の風除けくらいは作れる」


「木はあるか」


「ある。だが道具がねえ」


桂弘信が小さく笑った。


「石、削るか」


原始的な提案。だが現実的。


敬三は全員を見る。


不安はある。

だが、崩れてはいない。


「よし」


その一言で、空気が締まる。


「水探し班、陸班、浜班に分かれる。

暗くなる前に、戻ってくること。

迷ったら――動くな」


誰も異論を言わない。


敬三は最後に海を見る。


穏やかだ。

だが信用はしない。


「ここは優しくない」


小さな声。


だがその言葉は、全員の胸に同じ重さで落ちた。


そして十二人は動き出す。


剣も魔法もない。

あるのは手と、知恵と、生きたいという意志だけ。


文明は、まだ影も形もない。


だが確かに――

この瞬間、始まっていた。


まずはどう生きるか。何もない世界に放り出された者の定め。

彼らの成長を見届ける第一人者は、読者の君たちだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ