016、0からのスタート
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波音は絶えず続いている。
それだけが、この世界が本物だと証明していた。
敬三はゆっくり立ち上がる。
膝がわずかに震えたのは、寒さか、それとも別のものか。
「……全員、動けるか」
声は大きくない。だが通る。
「なんとか……」
「足は平気だ」
「頭も割れてねえ」
返事がぽつぽつ返る。
欠けている声はない。十二人、いる。
敬三は海ではなく、今度は陸を見る。
「まず、水だ」
短い言葉。だが最優先事項。
花子がすぐに動いた。
「明美、千紗――あ、違うな、島根さん。君島さんも。水探し、いける?」
島根明美は頷き、地面にしゃがみ込む。
指で土をこすり、匂いを嗅ぐ。
「塩気は強くない……地下水、あるかも」
君島一重は丘の方を見た。
「高いとこ行けば流れ見えるかもしれない」
「俺も行く」
荒波恭一が立ち上がる。
敬三は止めない。ただ一言だけ。
「無理はするな。戻れなくなったら終わりだ」
三人は頷き、丘へ向かった。
「食い物は」
今度は神楽一番が口を開く。
敬三と視線が合う。
海の男と、陸の男。
「海だな」敬三が言う。
「だが道具がない」
全員の視線が自分の手元に落ちる。
何も持っていない。
そのとき、丑三がぽつりと呟いた。
「……あの歪みから、物も出るって話、あったよな」
全員が、先ほど空が揺れた場所を見る。
静かだ。だが、何かが起きそうな気配が、そこにある。
「賭けるか?」萬月が言う。
敬三は首を振った。
「最後だ。まずは拾えるもんでどうにかする」
視線が砂浜へ向く。
貝殻、流木、打ち上げられた海藻。
文明ゼロからのスタート。
「夜はどうする」
博多希子が言った。
全員が空を見る。
太陽は高いが、時間は止まらない。
神楽一番が砂浜から少し離れた場所を指さす。
「丘の手前、風が弱い。簡易の風除けくらいは作れる」
「木はあるか」
「ある。だが道具がねえ」
桂弘信が小さく笑った。
「石、削るか」
原始的な提案。だが現実的。
敬三は全員を見る。
不安はある。
だが、崩れてはいない。
「よし」
その一言で、空気が締まる。
「水探し班、陸班、浜班に分かれる。
暗くなる前に、戻ってくること。
迷ったら――動くな」
誰も異論を言わない。
敬三は最後に海を見る。
穏やかだ。
だが信用はしない。
「ここは優しくない」
小さな声。
だがその言葉は、全員の胸に同じ重さで落ちた。
そして十二人は動き出す。
剣も魔法もない。
あるのは手と、知恵と、生きたいという意志だけ。
文明は、まだ影も形もない。
だが確かに――
この瞬間、始まっていた。
まずはどう生きるか。何もない世界に放り出された者の定め。
彼らの成長を見届ける第一人者は、読者の君たちだ。




