157、修復師の存在を知る
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砂像の前まで歩みを進めたチェルシーは、ふと足元に不自然な揺らぎを感じた。
砂の結晶が微かに波打ち、空間そのものが歪んでいる――不安定な「ゆがみ」だ。
直感が警告する。
チェルシーは咄嗟に背負い人形を構え、その場に身を低くして対峙する。砂像の光が揺れ、人形の関節が静かに鳴った。
そのとき、遠くから明るくも張りのある声が響いた。
「そこの人ー! 危ないから離れていなさーい!」
チェルシーは声のした方を一瞥する。砂の揺れは徐々に激しくなり、ゆがみは不安定さを増していく。どう動くか、短い間に頭を巡らせる。
もしここで何かを間違えれば、ゆがみは裂け目となり、マナの砂漠全体に危険を及ぼす――そんな感覚が、体中に走った。
やがて、声の主が砂塵を巻き上げながら駆けてくるころ、ゆがみは裂け目となり、周囲のマナが急速に乱れた。砂の粒子が渦を巻き、空間が歪み、耳鳴りのような音が辺りに響く。
「水の大精霊よ。我が呼びかけに応えて姿を現せ。出でよ! ディーナ!」
声に応えるかのように、空気の中から青い光の奔流が立ち上がった。大精霊ディーナだ。光を帯びた水の精霊が裂け目を包み込み、瞬く間にマナを整えていく。
チェルシーはただ立ち尽くす。人形を構えたまま、目の前で起こる異次元の光景を息を呑んで見つめた。数分のうちに裂け目は修復され、ゆがみへと戻った。
胸に衝撃が走る。自然に閉じると思われていた裂け目が、「誰か」の意図によって修復されていた――その事実を、目の前で知ったのだ。
チェルシーの口は、驚きのあまりしばし空いたままだった。砂漠の静寂とマナの濃密さ、そして精霊と人間の力――そのすべてが、この瞬間に彼女の中でひとつに結びついた。
このシーンではこの世界の核心の一つ、時空のゆがみと裂け目の仕組みをチェルシーが目の当たりにします。自然現象ではなく、意図した修復。では、いったい誰が? そんな疑問がチェルシーに浮かびます。
その答えにたどり着くのは、もう少し先の話。




